第09話 夢の向こうに繋がる世界
どぎまぎとする夕菜⋯⋯
よもや、タルパの作り方やダイブのやり方に関する本を探していますなんて⋯⋯少し、何だか相談しづらかった。
「う、うん、ちょ、ちょっと⋯⋯あの、占いとは違うんだけど⋯⋯」
キョどる夕菜。
半世紀近く本を売り続けた者のカンは鋭かった。一瞬、店主のおやじの眼鏡が光輝いたように見えた。
「この商店街の雑貨屋に聞いてみな」
おやじ、曰く。
雑貨屋の店主は易者でもあり、深夜の駅前通りの路上で、たまに占いをしているとの話だった。オカルト方面にも詳しく、相談すれば何でも喜んで話を聞いて、アドバイスをしてくれるらしい。
確か⋯⋯
夕菜が中学生の時、その雑貨屋で安いパワーストーンを買った記憶はある。しかし、それっきりであり、その話も初耳でもあった。
「それにしても⋯⋯君は本当にオカルト関係が好きだよね」
「趣味ですから」
「趣味ねぇ。あまり変なもんに関心持っちゃいけないよ。ほどほどにな⋯⋯」
結局、夕菜は大学ノートを一冊だけ買い、書店を後にした。今度の週末に雑貨屋に行って見よう⋯⋯夕菜はそう決めた。
気がつくと⋯⋯
立教大学の正門前を歩いていた。
「私は絶対、ここに合格するんだ!」
ぎゅるるるる
直後、お腹が鳴る⋯⋯足早に自宅へ向かった。
その日の晩も、自室のベットの上で座禅を組み、ダイブ界のイメージ作りに励む。明晰夢で上手く再現できない状態が続いていたが⋯⋯
ただ、どこか見知らぬ建物内の⋯⋯
長く先が遠く伸びた、廊下か回廊のような場所にいる光景を、夢の中で何度か見た。しかし、その先を抜けた場所は⋯⋯夕菜が通う高校だったり、今日行って来た商店街であるなど⋯これまでの内容と変わらなかった。
その後、夢の中で好き勝手放題できる訳だが⋯⋯
いつも、グランド・セフト・オートと決まっていた。
夕菜は学校のある体育教師が大嫌いであった事から、昨晩は夢の中で学校の体育館を破壊して倒壊させた。
ただ、明晰夢を毎日続けるのは体に悪い。
実際、なんだか寝不足のような怠さも感じられる。
雑貨屋で相談してから再開しようと決め、その日の晩は、朝までぐっすり普通の眠りに就いた。