第08話 気怠い夏の陽気

投稿日 2023.12.10 更新日 2023.12.10

 あれから数日が経過――

 期末テスト明けで、この後、夏休みを控えた校内は、和やかな雰囲気に包まれていた。教科担当の教師が所用と称して早退したため、今は自習時間として言いつけられていたのだが⋯⋯

 生徒は誰も学習はしておらず、友達同士で和気あいあいと談笑していた。夕菜も机に突っ伏した状態で、顔を窓の方に向け、外を漫然と見つめていた。

 今日はよく晴れた夏の陽気だった。

「あーなんか、ぜんぜん再現できない⋯⋯」

 あれから毎晩、明晰夢でダイブ界の再現に挑戦するも、自分が思い描いて考えていた世界へ行くことができないでいた。

 次の瞬間⋯⋯

「コラ!!お前ら、今は自習時間だろ!!」

 教室の前側のドアが突然開き、担任教師の声が教室内に轟いた。

 一瞬で教室内は静まり、夕菜も驚いて机から起き上がり、背筋を伸ばす⋯⋯教師の名は折原裕司。夕菜のクラス担任で国語を担当していた。

 折原は教室内に入ると、生徒を一人づつ睨むよう威嚇して歩き回る。

 そして、何故か夕菜の前で立ち止まる⋯⋯別にそれほど怖い先生ではないが緊張する。折原が深いため息をつく。

「御前賀、ちょ、お前⋯⋯何やってんの?」

「は、はい、自習をですね⋯⋯」

 教科書を上下逆さまに持ち硬直する夕菜。

 その後、折原は教壇に戻ると説教を始めた。不幸なことに⋯⋯この日の授業はこれが最後であったため、それは夕方の遅い時間まで延々と続いた。

 折原は兄貴肌の熱血教師で⋯⋯

 こういう状況になると、とても暑苦しくなる。

 まぁ、なんやかんや、生徒たちからは慕われており⋯⋯全員、おとなしく折原の話に付き合った。

 ようやく説教から解放されると、夕菜はいつも立ち寄っている駅前の書店へ足早に向かう。

「たく、本当に暑苦しい先生よね。たまんないわ!」

 占いやオカルト関係のコーナーの前に立ち、ダイブに役立ちそうな本はないか探す。オカルト雑誌「モー」の別冊が並ぶ個所を重点的に探す。ネット検索しても、ダイブに関するサイトは少なかった。

「それっぽいの、ないなぁ⋯⋯」

 老齢の店主のおやじが夕菜に声をかける。

「探し物かい?」

 困った表情をしていた夕菜を放っておけなくなったようだ。