第26話 三途の川に一番近い山荘

投稿日 2023.07.11 更新日 2023.07.11

その日の昼までには
事故の全容はほぼ明らかとなり
すべての乗員乗客の生存は絶望的となった
昨晩、偶然⋯事故発生直後の様子を目撃した者が
近所に何人かいたらしい
いずれの話も
大きな爆発音の後に
まるで巨大な火の鳥⋯朱雀を思わせる激しい炎が立ち上り
遥か上空へ消えてしまったそうだ
一方、酒酒天子の行方は不明扱いのまま
わずか一晩の間に
ピータン王国と恒華人民共和国との間で政治的な決着がつけられた
婦女子まで処刑した非人道的な行いに対して
各国から批判の声が上がり始め
経済制裁をチラつかされたことで融和路線へ一転
何よりも⋯周登宇の隠し口座がこのピータン王国にある事実を
ピータン政府は把握していたのだ
その日の夕方までに国境閉鎖は解除され
普段通りの状態に戻った
窓辺で運幸大連峰を見つめるA子
「きっと、どこかの国にリスポーン(転生)やろな⋯」
リスポーンが発生すると記憶はなくなり
まったくの別人となる
一般の死者同様、どこかの国の砂浜に打ち上げられるか⋯
あるいはデスタウン子として
デスタウン住民のどこかの夫婦の元に生まれるか⋯
それはコウノトリの気分次第である
もしも前者でデスタウン住人になることを選ばずあの世へ向かうなら
きっと、この凸や荘に再びやって来るかもしれない
三途の川に一番近い山荘である