タルパ戦争 File37 霊障
木口のタルパ暴走の話が⋯⋯
瞬く間にタルパ界隈中に行き届いた。
多くの界隈住人が固唾を飲んで見守る⋯⋯当然、更梨のように霊視を試みようとする自称が幾人か現れた。
木口は零との事前打ち合わせにより⋯⋯
本当に攻撃してもらい。心身ともにやつれ果てた。
「よ、よし!ここまでやれば⋯⋯疑われることはないだろう」
「だ、大丈夫!?浩一!!辛いよ!!僕、もう、こんなことしたくないよ!!」
「大丈夫だ⋯⋯辛いだろうが、また、明日も頼む⋯⋯」
零は泣きながら、木口に寄り添う⋯⋯
木口は呼吸を荒くしていた。あの後、零に自らの身体に激しい霊障を起こさせて、精神の限界まで自分を追い詰めた。
「どれ⋯⋯たらばがにオカルト板を覗いてみるか」
木口はよろけながらパソコンの前に座る。
「浩一、何か食べた方がいいよ。せめて、水くらい飲もうよ!!」
「ダメだ!!浮島さんが東京に戻って来るまでは⋯⋯がんばるぞ⋯⋯」
まるで、今の木口の姿は⋯⋯
試合前の減量に励むボクサーそのものだった。
で、肝心のたらばがにの方だが⋯⋯
本当に適当でいい加減な書き込みで溢れていた。
「零が動物霊に乗っ取られて手に負えん状態になっているとさ⋯⋯」
「えっ、何それ?」
「うーん、何々⋯⋯木口はタルパに人格を乗っ取られた模様???木口死亡説???なんじゃこりゃ?いや、僕はちゃんとここで呼吸してるぞ」
「浩一⋯⋯本当に攻撃する必要あった?こいつら⋯⋯全員、イカサマ霊能者だよ!ウソつきホラ吹きだよ!みんな適当なことばかり言って」
「そ、そうだな⋯⋯でも、中には本物がいるかもしれない。念には念をだ」
その直後である⋯⋯
背後の本棚がガタガタ震え始め、例のポスターガイストが始まり出した。
「なっ!また、明美のやつか!?」
木口は慌てて明美へ国際電話をかける。
プルルル♪プルルル♪カチャ☆
「おい、明美!物理干渉はやめろ!」
《いや~力を持て余してまして。にゃははは》
「とにかく、静観してくれ!」
《更梨って男⋯⋯そっち、覗こうとしていたわ》
「そうか⋯⋯だが、今は静観だ!」
《えー、もう処したぁ》