タルパ戦争 File38 共有ダイブ界と言う名の幽界
木口の妹、明美は⋯⋯
オカルト界の草薙素子とも言うべき凄腕級のダイバーだった。
そして、自身の力を適切にコントロールするため、適度なガス抜きのようなものが必要だった。でないと、なんか暴走する。
赤い着物を着た女の子で、幽界(アストラル界)を蹂躙する。
夜な夜な、動物霊狩りをして遊んでいたりもしたのだ。やり方は非常にえぐく残忍を極めた。零はそれを見て怯えたのだ。
明美の幽界は独特だった。
第二次世界大戦の欧州戦線を思わせる平原だった。
戦車に乗りご満悦となる明美⋯⋯
そう⋯⋯
心霊ロボットと称するものは⋯⋯
赤い着物を着た座敷わらし風の女の子は⋯⋯
後に、タルパ界隈史上初となる、ダイブ体と定義されたものになる。
当初、東京に残る兄の監視を行うために作り出したタルパ的なもの、変遷型のようなものに思われたが⋯⋯兄の周辺にまつわる、女性関係とは何も関係のない出来事にも使用するようになって行った。
それでタルパ界隈で飛び交う念を注視し続ける。
「快感だわ!」
明美は砲塔ハッチから身を乗り出し、前方から吹いて来るダイブ界の風を感じる。背後から僚車も何台か続いていた。
「いた!まずは、あいつからね⋯⋯」
山伏のような出で立ちをした⋯⋯
一人の若者が平原で佇んでいた。呪文のようなものを唱え、霊的攻撃の準備に入っていた様子だった。
明美は無線機で各車両に単縦陣を取るよう指示を出し、砲塔を山伏に向けるよう指示を出す。
もう、あとは何を言わなくてもわかるだろう⋯⋯
そんな感じで⋯⋯
明美はタルパ界隈住人を見つけては、砲撃を加えて遊びまくった。
「これはほんの余興よ!金曜日の夜は盛大に暴れてやるわ!」
木口はうかつな事をした。
隠し事をするとかえって良くないと⋯⋯
明美にも浮島の計画を伝えてしまっていたのだ。
一方、更梨はうなされていた。
赤い着物を着た女の子の乗った戦車に追いかけ回される夢を見て⋯⋯
翌朝、高熱を発して翌週まで寝込み続ける。
「また、あの少女だ⋯⋯彼女は一体何者なんだ?看破してやるぅううう!」
更梨はベット上でそう呟く。