タルパ戦争 File29 好奇心
省内の廊下をふらふら歩く一人のチャラそうな男がいた。
ポクシー大尉である。B子が指揮をする部隊に所属するパイロットであったが⋯⋯素行の悪さで有名だった。
とりあえず、新しく開発された無人偵察機のテストパイロットとして、B子とともに、所属していた部隊から急遽駆り出されていた。
今、B子は会議中だ⋯⋯
「さて、口うるさい上官殿は会議中だ。今は俺様タイムだな」
例の如く、ナンパに励もうとする。
しかし、流石は軍中枢部、国防省だ。現場部隊にいる時のような感覚で振る舞うことができない。そこら中にMPも警戒にあたっており気が抜けない。不審に思われ、身分証の提示を求められたり、細かな注意を受ける始末だ。
「あー偉いさんの多く集まる場所はホントつまんねぇーな」
結局、ポクシーは無人偵察機のオペレーションルームに籠る。操縦席の背もたれを軽く後ろへ倒し、頭の後ろで手を組み天井を見つめる。
「こんなクソつまんねぇ実験だか何だか知らん仕事さっさと終わらせて、早く元の基地に戻りたいわ」
ポクシーは深いため息をつく。
しばらくすると、妙な悪知恵が思い浮かび、不敵な笑みを浮かび始める。
「そうだ、これを使えば⋯⋯今はB子も博士もいないし、自由にいじり放題さわり放題じゃん!」
ポクシーは起き上がると、目の前の無人偵察機のコントロールシステムを起動させた⋯⋯
「B子だって遊ぶように操縦していたしな⋯⋯別に構わねぇだろ」
しかし⋯⋯
先日、B子自身が操縦した際の設定が入ったままの状態だった。タルパ戦争が起きた10年前の現実世界へ⋯⋯
機体をいきなりタイムワープさせる形となった。
「そうか⋯⋯設定が入ったままだったのか⋯⋯てか、初期値に戻しておけよ。俺は女風呂を覗くつもりで起動させたんだぞ」
機体自体の大きさは⋯⋯実はそれほどでもなかった。
直径は1mも満たない。光学迷彩によるステルスモードもあり、身を隠すことも可能だった。
「あーなんだ?ここは?」
メインモニターには⋯⋯
どこかのマンションの一室内が映し出されていた。ところどころ⋯⋯包帯を巻いた男が寝込んでいた。
「そう言えば、B子のやつ⋯⋯これ使って何を調べていたな」