タルパ戦争 File30 宇宙思念体
翌日、更梨は近所の診療所で応急処置をしてもらい、自宅のベットで安静にしていた。幸い、夏休み中ともあり、学業に支障はない。
霊視の儀式を執り行おうとしたところ⋯⋯
突然、金だらいは降ってくるわ⋯⋯
炎の中から謎の女性らが現れ、火を吹いてくるわ⋯⋯
前日にはUFOが現れるなど⋯⋯
散々な目に遭っていた。
しかし、そんな更梨でも凄腕級の霊能者であることには違いはなかった。室内に妙な気配を感じ⋯⋯目だけ動かすように部屋の隅々を見渡す。
「今、この部屋の中に俺以外の⋯⋯何かがいるな」
そして、すぐにその存在に気づいた。
直径1mほどの大きさをした何かが⋯⋯自分のすぐ傍にいる。
肉眼では見えなかったが、第三の眼を通じて軽い霊視をしてみたところ、その正体もすぐにわかった。
「こいつは⋯⋯あのUFOか⋯⋯なんでまた俺の部屋の中にいる。しかし、霊視で宇宙人の乗り物が見えるもんなのか?」
UFO幽霊説と言うのがある。
もしも、本当に宇宙人が地球にやって来ていたなら⋯⋯人類はとっくの昔に征服されているはずだ。今頃は宇宙人の奴隷か家畜だろう。
そう考えると⋯⋯
UFOが宇宙人の乗り物とは考えられず、別の何かである線が濃厚となる。オカルトの世界ではUFO幽霊説がにわかに注目を集めていた。
「外宇宙から飛来して来た思念体だろうか⋯⋯そうだな。きっと」
更梨は覚悟を決めた⋯⋯
「俺も日本では指折りの霊能者だ⋯⋯除霊してやる」
更梨はゆっくりと立ち上がると、UFOらしきものがいる場所に近づいた。呪文をぶつぶつと唱え、精神を集中させる。
「喝っ!!」
更梨は渾身の力を込めてUFOに向けて正拳突きをした。
直後、激しい金属音が鳴り響く⋯⋯
更梨は床に倒れ込み、もがき苦しむ⋯⋯そりゃ、チタン合金製の球体をそれと知らずに全力で殴ったからだ。
しかし、この衝撃で光学迷彩が解除され、自分が殴ったものの正体を直接目で見ることとなる。
「なっ!!」
あらためて間近で見ると機械的な何かのようだった。呆然とする更梨⋯⋯すると、この球体から幼女の音声が聞こえてきた。
《おい!大尉!何、勝手に弄っとるんや!》