Episode 09 勝利への逃走
エルフの大神殿から颯爽と逃走するトットフォーら⋯⋯
車中、キンカは大爆笑していた。
「あはは!いるわよね!パニくって手で押さえようとするヤツ!あの1200歳のクソBBA、火事になると慌てて消火器を火の中に放り投げる系の女だわ!魔法をバカにした報いよ」
トットフォーもくすくすと笑う。
「キンカ、本当にありがとう」
「どういたしまして!さすがにゴキブリが知らせに飛んで来た時はびっくりしちゃいましたけど」
ちなみに、蟲魔法とは⋯⋯
そこらの虫を捕まえて使役する魔法となる。伝言や何か小さいものを運んでもらうのだ。
「あっ、キンカ、それなんだけど⋯⋯」
「わかってます。ちゃんと虫との取引内容は確認してます」
ただ、蟲魔法は⋯⋯
虫との交換条件となる。虫に何かお願いをする際は、食べ物をあげるなど、虫が喜ぶようなものを差し出さねばならない。
トットフォーの場合、後払いと言う形となる。
そこで、キンカは大神殿から去る際、あるものを隠し置いてきた。
後にそれは⋯⋯
大神殿を大混乱に陥れ⋯⋯
マーヤを苦しめるものとなる最悪の品だった。
エルフの大神殿に向かう道すがら、ホムセンに立ち寄り、ペットコーナーで大量の昆虫ゼリーを買い占めて、それを神殿内の床下や隙間と言う隙間、あちこちにばら撒いて来たのだ。
「数カ月後くらいが楽しみですわ。きっと、ゴキブリの楽園に変わっていると思いますわ。念のため、そのくらいの時期に周辺のホムセンでバルサン、殺虫剤は買い占めて入手困難にしてやります!そのくらいの軍資金あります」
キンカは後ろの座席に置かれた⋯⋯
なんか金属製の大きな黒い箱を指差した。
そう⋯⋯
キンカは謁見の間の玉座の裏手に隠されていた金庫を見逃さなかった。どさくさに紛れて強盗もやってのけていたのだ。
「中にどのくらいのお金が入っているか楽しみですわ」
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一方、大神殿では⋯⋯
金庫がなくなっていることに気づいたマーヤが怒り狂っていた。
「あのクソガキども!ぶっ〇してやる!」
トットフォー200歳、キンカ120歳、この二人の美少女は⋯⋯エルフの世界ではガキである。