Episode 02 魔法が否定されたつまらん異世界ファンタジー
ヤマダハル⋯⋯
人口1000万近くに及ぶ超過密都市で、ヲティスタン共和国の首都として、新しく整備が進められる予定の巨大都市であった。
しかし、建設中の鉄道や高速道路も、所々放置されたままの状態で、一部の地区ではスラム化も進むなど、深刻な社会問題を多く抱え込んでいた。
軍隊を思わせる装備を持った警察による物々しい警備が、都市の各要所で行われており、もはや、普通の生活ができる街ではなかった。
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雨の中、黒いローブを頭の上から被り、歓楽街の裏路地を小走りで先を急ぐ女性がいた。ローブの隙間からは尖った耳が出ていた。それは色白のエルフの美女を思わせるものだった。
女性はある建物の裏口の前に立つと、ドアを激しくノックした。すると、ドアの内側から少女の問いかけるような声がする⋯⋯
「お茶漬けと言えば?」
これに対して、ローブは来たエルフはこう答える⋯⋯
「永谷園ゆーもんはお茶漬けの素人!」
すると、ドアは静かに開かれた。
開かれたドアの隙間から小麦色の肌をした美少女エルフが顔を覗かせていた。
「フォー様!お待ちしておりました!どうぞ中へ!」
そう⋯⋯
ローブを着た女性はトットフォーだった。トットフォーは雨で塗れたローブを脱ぐと、暖炉近くのハンガーへかけた。
「もう、ほんとやだ!ここ最近雨ばかりで嫌になるわ!」
「まったくです」
「キンカ、やつらの最近の様子、どう?」
「はい、ハワード王の娘が首相になってからと言うもの⋯⋯状況は悪化の一途を辿っております!我々が大攻勢に出るチャンスです!」
「政府軍のやつら、まさか⋯⋯時限式の攻撃魔法があるなんて、考えにも及ばなかったでしょうね」
「魔法や魔術をバカにした報いですね。未だに爆発の原因がわからず困惑している様子です」
「第二段、やるわよ!」
キンカはトットフォーの目を見つめうなずく。
彼女らは⋯⋯
反政府軍組織ヲティスレ軍のメンバーだった。
トットフォーはNo.2の大幹部で、現場での指揮命令をすべて握る事実上の代表とも言うべき存在だった。
そう、本当の代表、ブリュリューズ伯爵は⋯⋯どういう訳か滅多に姿を見せなかったのだ。