タルパ戦争 File10 運命の赤い糸
浮島の話によれば⋯⋯
木口と問題の座敷わらしとの間で、強い力が働いているそうだ。それは、まるで、運命の赤い糸で結ばれているように⋯⋯
「こいつを解くのは難儀するな⋯⋯零君、必要とあらば⋯⋯今、そう言ったよね?具体的にどういうことだい?まさか⋯⋯」
「僕はそれほど強い存在じゃない。でも、マスターのためなら刺し違えてでも倒すつもりでいるよ。そのくらいできる」
「⋯⋯」
浮島と零の奇妙な対話に、ただ横で黙って聞き入る木口⋯⋯
「なぁ、木口君。将来、結婚したいよね?」
「えっ?そりゃ⋯⋯まぁ、将来は結婚して家庭は持ちたいです」
「質問の仕方を変えようか。今の裕福な生活を手放してでも⋯⋯が前提条件になるけど⋯⋯それでも結婚したい?」
「浮島さん、質問返しで申し訳ないんだけど⋯⋯今の言葉の意味がわからない」
「そうだな、すまない。一から丁寧に説明するよ」
座敷わらしには二種類いる⋯⋯
一つ目は、家に憑くタイプだ。
一般的な座敷わらしで、住み着いた先の家を繁栄させる。しかし、気まぐれでもあり、何かの拍子で引っ越してしまうことも多い。突然、経済的に没落した家が⋯⋯恐らくそうだろう。
二つ目は、人に憑くタイプだ。
人間の異性に強い恋愛感情を抱き、一生涯にわたりその人を束縛すると言うものだ。このタイプの座敷わらしに取り憑かれた者は、恋愛経験や結婚を一度もすることなく⋯⋯一生を終える。
ただし、一つ目のタイプのものと違い、永遠の富と繁栄も約束してくれる。実際、木口の実家は非常に裕福な家庭だ。木口自身も去年、宝くじに高額当選して、スカイラインの最上級モデルを買い乗り回していた。
一方、零の考えはこうだ。
木口が結婚したい相手が見つかった時、座敷わらしを浄化するつもりでいるとのこと。当然、その時は零自身も浄化される。自分の能力より上回る者を倒すには、持てるすべてでやらねばならない。
零も確実に消失する。
この話を聞いて顔が青ざめる木口⋯⋯
「僕はロリコン趣味じゃない。大人の女性と赤い糸で結ばれたい。お金は仕事を頑張ればいくらでも稼げる」
「そうだね⋯⋯そういう風に考えられる木口君は立派だ」
浮島は木口をそうなだめる。