タルパ戦争 File07 鎮魂

投稿日 2024.04.10 更新日 2024.04.11

 凸都大学オカルト研究会で起きた悲劇は⋯⋯

 表向き、一人の学生の個人的な悩みを原因とした、精神的な病によるものと断定された。

 それは今から一週間前の出来事だった。

 タルパを作ったメンバーに異変が現れ始め、数日もしないうちに奇行を顕にするようになったのだ。

 凄腕の霊能者、陰陽師である浮島の力をもってしても改善が叶わず、後は現代の医療に望みを託す以外術のない状態に陥ったのだ。

 最終的に、凸都大学医学部付属病院の専門病棟へ隔離されたのだが、多忙な医療スタッフらの目を盗み、病室から抜け出し、そのまま屋上へ⋯⋯

「まだ呼吸ある!誰か!早く!緊急外来の御前賀先生に連絡して!」

 医療スタッフの悲鳴に近い声が鳴り響く⋯⋯

 病棟のあちこちの窓から、下界の様子を見ようと、他の医療スタッフや入院患者らが覗くも、誰もがすぐに引っ込め、カーテンを閉じる⋯⋯

 警察官の到着は早かった。

 とりあえず、シートで覆われる。

 そして、急いで用意された担架に乗せられ、そのまま緊急外来のある病棟へ運ばれた。

「自殺?え!!病院の敷地内で!?たくっ⋯⋯状況は!!」

 そう、夕菜の父である。

 洗浄台で急いで両手を洗うと、手術室へ向かった⋯⋯そして、その前の廊下のベンチで、項垂れるように座っていた男子学生がいた。

「違う!僕はこんなことのためにタルパの教えを広めた訳じゃない!」

 そう、浮島である。

 手術は夜遅くまでに及び、ICUへ隔離された。

     :

「浮島さん!!ほら!!オレ、美少女のタルパ作れましたよ!!」

「えっ⋯⋯」

 自ら命を絶とうとした仲間が、タルパと称する美少女と花畑で一緒にはしゃぎながら戯れていた。

「浮島さん!!すばらしい技の伝授、ありがとうございます!!」

「ち、ちがう!!ちょっと待て!!待ってくれ!!」

 大切な仲間が⋯⋯

 タルパと手を繋ぎながら、三途の川らしき場所の方向へ歩き出す。

「戻れ!!こっちへ戻れ!!」

 浮島は必死に叫ぶも、二人の姿は視界から消えた。

 直後、寝落ちで姿勢を崩した浮島が驚き、目を覚ます⋯⋯全身、寝汗でぐっしょりな状態にもなっていた。

「夢か⋯⋯」