タルパ戦争 File06 親友同士の約束

投稿日 2024.04.08 更新日 2024.04.08

 翌日の昼下がり⋯⋯

 雲一つない晴天の青空が広がる日だった。

 旧工学部研究棟の屋上で、二人の男子学生が欄干にもたれかかり、下界を見下ろしていた。

 老朽化のため取り壊し予定の工学部の研究棟であったが、有志らによる活動で大学当局の承認を得ることができ、耐震補強工事を経て、サークル棟に生まれ変わっていた。

 微生物実験室であった名残だろうか⋯⋯

 陰圧室であったような⋯⋯そんな妙な区画構造をした部屋が、凸都大学オカルト研究会の一室となっていた。夏休みともあり、研究会のメンバーたちは、その中で占いの練習をしていたり、遠視の実験をしていた。

 浮島と木口は息抜きと称し、二人だけで屋上へ行き、前日の話の続きをすることにした。

 しかし、その日の最高気温は30℃以上に達していた。

 次第に暑くなって来た⋯⋯

「除染室だった場所に行かない?あそこ⋯ボタンを押せば、まだエアシャワーの風が出せるし涼しいよ。僕はたまにあそこで涼んでいるよ」

 浮島にそう誘われ、木口は一緒に微生物実験室の隣に設けられていたエアシャワーの出る部屋へ移動した。浮島の言う通り、機械は壊れておらず、ボタンを押すと稼働させることができた。

 心地良過ぎるくらいの風が勢いよく出て、汗はすぐに引いた。

「浮島さん、本当にいいんですか?怨まれますよ⋯⋯」

「これは誰かがやらなくちゃいけないんだ!それは自分一人だけでいいだろう」

「浮島さん、僕には提案がある」

「なんだい?急に改まって」

「浮島さんの案に賛成するよ。ただし、暴走するタルパは僕の零が演じる。僕がダイブで精神錯乱した事にしよう」

「⋯⋯」

「架空の人物とタルパをでっち上げるのはリスクが高過ぎる。僕が演じれば見破れにくいよ」

「いや、汚名を被るのは僕一人だけでいい。もちろん、真実が闇に葬られるのも正直嫌だ⋯⋯僕にも守りたいプライドはある。恐らく、自作自演であることないこと言われるだろう。何年後か君が証言者として真相をぶちまけて欲しい」

「そんなの⋯⋯ずるいよ!浮島さん一人だけにすべてを背負わせないよ!」

 木口は号泣しながら、浮島の胸倉に掴みかかった⋯⋯浮島は木口の熱意に押し負かされて、木口も首謀者の一人となることを承諾した。