タルパ戦争 File05 悲しい決断
聞けば⋯⋯
この二人の女の子たちは、東京ドームシティアトラクションズへ遊びに行っていたようだ。守護霊持ちの女の子も木口の存在に気づいたようだ。しかし、気づかない振りをし続けた。
木口も察して気づかない振りをした。
もう一人の女の子は、今のこの状態に本当に気づいていない様子だった。霊能力はあるように感じられたが⋯⋯それほど強いものでなかった。
一方、零とエシャロットとの奇妙な交流が続いた⋯⋯
「あたいのマスターの友達がね、満員電車が苦手なもんで⋯⋯そいつを少しでも和らげるため、こうして独自の幽界を張って周囲の気を撥ねのけていたのさ。こうするだけでも⋯⋯幾分、楽にさせてあげることができるのさ」
「でも、それは一般人に対してのみだよね」
「ああ、あんたらのような人たちとは⋯⋯滅多に接触することはないけどね」
「そっか⋯⋯そろそろ僕たちは行くよ。マスター、行こう」
次の瞬間、木口ははっとなる。
後ろを振り向かないように気を遣い⋯⋯静かにベンチから立ち上がり、その場から離れ、改札の方へゆっくりと向かった。
しかし⋯⋯
背後から女の子の声がしたように聞こえた。
「驚かせてごめんなさい」
木口は右腕を上げて、手を軽く振った。こうして、木口は雑踏の中へ消え、一期一会の不可思議な体験は終わった。
「零、あの子のように本当に能力のある者が⋯⋯息を潜めるように生きて行かねばならないこの世界の現実に⋯⋯僕は腹立たしく思うよ」
「そうだね。きっと、浮島も⋯⋯マスターと同じように悩んでいるんだよ」
「そうか、そうだね」
直後、木口の中で何かが吹っ切れたような⋯⋯
そんな感覚に襲われた。
「零、僕は決めたよ!浮島さんの案に全面的に賛成する!」
「わかった。僕も協力するよ!もう、何も言わなくていいから。僕はマスターの指示に黙って従うよ」
気がつけば⋯⋯
木口は小田急線のホーム上にいた。
「零、とりあえず、君には本当に暴走して、僕に対して攻撃をしてもらう」
「えっ!?」
「実験の参加者の中に、本物のタルパー、霊視のできる能力者がいたら大変だ」
「ちょっと、待って!!」
激しく困惑する零⋯⋯