第99話 占領されたダイブ界

投稿日 2024.03.16 更新日 2024.03.17

 文子は明晰夢を得意とするタルパーであった。

 そう言えば⋯⋯文子は自身のダイブ界へ久しく行っていなかった。今晩は明晰夢を見ることに決めた。

「今晩は明晰夢の世界へ行くわ⋯⋯」

「ボクもそろそろ寝るよ」

 ゴンも文子と一緒に添い寝するため、布団の中へ潜り込むと、文子の横腹あたりで丸くなった。

 文子はまぶたを閉じると、深い眠りに落ちて行った。

     :

 その晩、文子は明晰夢の世界へダイブした。

 仮に「国」と呼ぶ世界へ⋯

「あら、しばらく来ない間に、だいぶ発展している様子ね」

 文子のダイブ界は⋯⋯

 ニューカレドニアをモチーフにしたものだった。

 文子は、この仮に「国」と呼ばれるダイブ界では、倉臼文磨と言う文豪として⋯⋯セカンドライフ的なもう一つの人生を謳歌していた。

 そして、一緒に眠りについたゴンも、この仮に「国」と呼ばれるダイブ界で文子⋯⋯いや、文磨の相棒として行動する。

「文磨!久しぶりにやって来たね!」

「そうだな⋯⋯にしても、だいぶ発展したなぁ」

 以前にはなかった⋯⋯

 南国パラダイスの楽園には、少し不釣り合いな都会的な建物、ビルなどが増えていた。住人もどうやら増加している様子だ。

 とりあえず、文磨とゴンの二人は、自分たちのダイブ界での家へ向かう。そこは二人が初めて出会った場所でもある。

 ゴンは肩車してもらう感じに⋯⋯文磨の頭の上に乗る。

「いや、それにしても⋯⋯なんか、変わり過ぎじゃね?」

「なんか、ボクもそう思う」

 ようやく、ダイブ界の家が見えて来た。こちらは特段変わった様子がない。中へ入ると、文磨はテレビを付けた。

《おはようございます!朝のガトーTVニュースです!》

 文磨とゴンは互いに顔を見合わせる⋯⋯

「ガトーTVなんてテレビ局⋯⋯ボクたちのダイブ界にあったけ?」

 ゴンが困惑した表情になる。

 そう言えば、道すがら、見覚えない国旗のようなものが、ところどころ立てられていたような⋯⋯

 文磨は家を飛び出すと、通りかかった通行人に尋ねてみた。

 すると⋯⋯

「ああ、先月、この島はガトー公国の信託統治領になったんだよ」

 愕然とする文磨⋯⋯