第80話 新しい母からの贈り物
家に一人残された穂都は、机に突っ伏すような姿勢で泣いていた。
父は部下どもに喝を入れに行くと称して、早々と会社へ向かってしまった。娘とじっくり対話するために、今日は午前半休を取得したのではないか?穂都はそう憤慨していた。
「お父さん⋯⋯酷いわ!」
そして⋯⋯新しい母親はどんな人だろうか?
連れ子がいたりするのだろうか?穂都の関心は次第にそちらへ向き始めていた。不安しかない。
「穂都!すまないね!今、帰ったよ!」
「エシャロット⋯⋯大丈夫だったの?もうぉ、心配したよぉ!」
泣きじゃくる穂都を慰めるよう抱きしめるエシャロット⋯⋯
ピンポ~ン♪
その時、玄関の呼び鈴の鳴る音がした。
「誰だろう?ちょっと、私、見て来るね」
「ほら、涙を拭いてからにしな!」
「うん」
穂都はハンカチで涙を拭きながら玄関へ向かった。
「ちわ~!ヤマト運輸で~す!」
「あ、今出ます!」
カチャ☆
いつもの配達員の声とわかったため、安心してドアを開ける穂都。すると、大きな平たい箱を持った配達員が立っていた。
「えっと、遠井⋯⋯穂都様宛のお荷物をお届けに上がりました!」
「え?私宛てに荷物?」
「ええ、こちらにサインお願いします!」
穂都は言われるがままサインをして荷物を受け取った。
「あざした!」
配達員は威勢の良い挨拶を済ませると、次の配達先へ向かうため、颯爽と去って行った⋯⋯
「誰からだろう?」
送り主を確認すると⋯⋯
「遠井玉⋯⋯あなたの新しいお母さんより?どゆこと?」
箱の中身は衣服らしい。
とりあえず、リビングで開封してみることにした⋯⋯すると、中から正装用の衣装が出て来た。
「穂都、今すぐ着てみたらどうだい!」
穂都はエシャロットに促されるがまま試着して見た。
「似合うじゃん!可愛いよ!」
:
倫太郎の父は⋯⋯
目下のところ、自身の息子と⋯⋯長年、黒川家のために尽力してくれた玉の将来が気がかりだった。
「そう言えば、玉さんの方もどうだい?」
「ええ、お陰様で来月にも入籍です」
「そうか!それはよかった!」