第80話 新しい母からの贈り物

投稿日 2024.03.01 更新日 2024.03.01

 家に一人残された穂都は、机に突っ伏すような姿勢で泣いていた。

 父は部下どもに喝を入れに行くと称して、早々と会社へ向かってしまった。娘とじっくり対話するために、今日は午前半休を取得したのではないか?穂都はそう憤慨していた。

「お父さん⋯⋯酷いわ!」

 そして⋯⋯新しい母親はどんな人だろうか?

 連れ子がいたりするのだろうか?穂都の関心は次第にそちらへ向き始めていた。不安しかない。

「穂都!すまないね!今、帰ったよ!」

「エシャロット⋯⋯大丈夫だったの?もうぉ、心配したよぉ!」

 泣きじゃくる穂都を慰めるよう抱きしめるエシャロット⋯⋯

 ピンポ~ン♪ 

 その時、玄関の呼び鈴の鳴る音がした。

「誰だろう?ちょっと、私、見て来るね」

「ほら、涙を拭いてからにしな!」

「うん」

 穂都はハンカチで涙を拭きながら玄関へ向かった。

「ちわ~!ヤマト運輸で~す!」

「あ、今出ます!」

 カチャ☆

 いつもの配達員の声とわかったため、安心してドアを開ける穂都。すると、大きな平たい箱を持った配達員が立っていた。

「えっと、遠井⋯⋯穂都様宛のお荷物をお届けに上がりました!」

「え?私宛てに荷物?」

「ええ、こちらにサインお願いします!」

 穂都は言われるがままサインをして荷物を受け取った。

「あざした!」

 配達員は威勢の良い挨拶を済ませると、次の配達先へ向かうため、颯爽と去って行った⋯⋯

「誰からだろう?」

 送り主を確認すると⋯⋯

「遠井玉⋯⋯あなたの新しいお母さんより?どゆこと?」

 箱の中身は衣服らしい。

 とりあえず、リビングで開封してみることにした⋯⋯すると、中から正装用の衣装が出て来た。

「穂都、今すぐ着てみたらどうだい!」

 穂都はエシャロットに促されるがまま試着して見た。

「似合うじゃん!可愛いよ!」

      :

 倫太郎の父は⋯⋯

 目下のところ、自身の息子と⋯⋯長年、黒川家のために尽力してくれた玉の将来が気がかりだった。

「そう言えば、玉さんの方もどうだい?」

「ええ、お陰様で来月にも入籍です」

「そうか!それはよかった!」