第61話 タルパ出現

投稿日 2024.02.18 更新日 2024.02.18

 突然の出来事だった⋯⋯

 まるで、ホテル・モスクワの構成員を思わせる、厳つい軍人たちが目の前の現れたかと思いきや⋯⋯ポンスケを置いて消えてしまった。

「えっ?これで引き渡し完了?邂逅って⋯⋯こういうもんなの?」

 ポンスケを抱きかかえ、キョトンとする夕菜⋯⋯

 直後、一階から母の声がする。

「あまり大きな声出すとご近所に迷惑よ」

 はっとなり、我に返る夕菜⋯⋯

 そして、もぞもぞと動き出すポンスケ。ポンスケは見上げるよう、つぶらな瞳で夕菜の顔を見つめていた。

「ゆ、ゆ、夕菜ちゃん」

「ぽ、ぽ、ポンスケ!」

 やはり⋯⋯

 ウィキサイト「タルパを全力で作ろうと思っているまとめ」で読んだ通り、邂逅型のタルパは自動化と視覚化が完了していた。

「これが浮き輪さんの言うタルパね」

 嬉しさのあまり、夕菜はポンスケを頭上高く持ち上げ、頬ずりをする。

 その日から、夕菜とタルパの共同生活が始まる。

 早速、DMで穂都とゴンに報告をする。

 しかし⋯⋯

 その時に限って、二人からの返信はなかなか返って来なかった。

「今は二人とも忙しいのかな?」

 まぁ、穂都とゴン⋯

 厳密には文子の身に起きた状況を知る由もなかった夕菜は、ポンスケとの邂逅を心から喜んでいた。

 引き続き、Xで邂逅完了の報告ポストもする。

 すぐさま、いいねも多く付き始め、夕菜はこれまで感じたことのない至福の境地となった。

     :

 その時、夕菜の自宅へ、一人の男が向かっていた。

 浮島である。

 私服に着替え、普通のサラリーマンを装う⋯⋯そして、移動中は背後も常に注意しながらのものとなる。

 昨今は日中間の領土問題を発端に、一般国民の知らないところで、霊能力戦も密かに行われ始めていた。すでに、人民解放軍心霊気功部隊との戦いが始まっていたのだ。

 そして、国内のある組織からも⋯⋯

 浮島たちの部隊は監視され続けていた。公安警察のマル自である。

 実家が護国系神社で、陰陽師の家系という不可思議な点に、公安警察からも注視されているだ。

「早速、つけられているようだな⋯⋯」

 浮島を遠くから睨み、その後を追う男がいた。