第11話 オカルト世界の深淵へ
店主は深いため息をついた⋯⋯
夕菜は店主を真剣な眼差しで睨むよう見つめ続けた。それは強い決意と意思がよく表れた表情であった。
店主は重い口を開くように話し始める。
「タルパとは、本来チベット密教の僧侶が実践する⋯⋯」
なんやかんや、小一時間くらいにはなっただろうか。夕菜はこの老紳士の店主から貴重な情報を引き出すことに成功した。
最後は授業料と称して⋯⋯夕菜はやや高め目のパワーストーンを買おうとしたが、店主から無理はするなと苦笑いされ、結局のところ、目星を付けていた安い物で済ませることにした。
いつもよりやや遅い帰宅となり、自宅に着くや否や、母親から心配の声をかけられる。夕菜はそそくさと自室に籠る。
「あとは⋯⋯ゴンにも相談して見よう」
夕食までの空き時間、ゴン宛てのDMを作成して送信した。
すると⋯⋯
10分と経たないうちに返信があった。
直後、一階から母親の呼ぶ声がしたため、それを読むのは夕食の後にしようと一階へ降りた。
テーブルで母と二人で夕食をとる。
「夕菜はまだ二年生だけど⋯⋯そろそろ、将来のこと本気で考えたら?」
「ちゃんと考えている!私は隣にある大学に行くの!」
「お母さんはやりたい事のできる大学に行った方がいいと思うな⋯⋯」
「そのうち決めるわ!」
夕菜は母親の話を聞き流すよう、お茶碗のご飯をガツガツを食べる。
ゴンへの返信も早くしたい。
リビングのテレビからNHKのニュースが流れていた⋯⋯
どうやら、現在、山手線や京浜東北線、東海道線が、人身事故により運行が停止されているらしい。
踏切内にいた男子大学生がはねられて死亡したらしい。
男子大学生は電車にはねられて上空へ吹き飛ばされ、隣の路線の架線を破壊した挙句、さらにそれでバウントして、線路と並行するように走る道路上で停車していたゴミ収集車の投入口へ投げ込まれたらしい⋯⋯
そんな奇妙な事故が発生したようだ。
「だから、電車とかバスに乗って学校へ行くのが嫌なのよね!」
「就職先も歩いて行けるところかな?」
少し困ったような笑みを浮かべ、娘の愚痴に応える母⋯⋯夕菜は夕食を早々と済ませると自室へ戻った。