第32話 湯世林

投稿日 2023.07.15 更新日 2023.07.16

そう言えば⋯湯世林なる謎の漢方薬剤師が気になり始めた
ユセリア移民は断念したため
笑わなくなる薬は必要なくなったが⋯
まだ時間が残されていたため興味本位で立ち寄ってみることにした
華僑の男性から渡されたメモ書きを頼りに
今度は薬局を探す
まぁ、すぐに見つかった
市場の一番奥の⋯薄暗く怪しげな雰囲気の漂う場所にあった
看板を見ると
なんでも調合しますと書いてあった
「今なら逆に元気が出て笑いたく薬が欲しいかな⋯」
そうつぶやいた瞬間である⋯
突然、背後から大きな声で男に話かけられた
「元気が出て笑いたくなる薬!!作れるよ!!うん!!」
「えっ!?あ??」
「あ、ごめんごめん!!驚かせて」
どうやらこの男性が漢方薬剤師の湯世林らしい⋯
岩凪は湯世林に背中を押され半ば無理矢理に店内へ通された
そして⋯用意したあった椅子に座らされると
問診のようなものが始まった
しかし、岩凪の受け答え方とその語彙から
湯世林は医学や薬学に知見のある者とすぐに見抜いた
「なんでそんなこと知ってるの?」
「すみません!!実は生きていた頃、薬学部の学生でして⋯」
「なるほど⋯ふ~ん」
「なんでも調合してくれるって本当ですか?」
「法律に触れんもんならどんな薬も作れるよ」
「なら、すみません。紙と何か書くもの⋯貸してもらえませんか?」
湯世林は言われた通り岩凪に紙とペンを渡すと
岩凪は化学式を書き始めた