タルパ戦争 File49 救済計画
デルタはパソコンの前に座ると、天井に顔を向け、両腕を大きく広げ、不可思議な発声を行い始めた。
「ら~~~ららら~~~はぁあ~~~」
目は何か白目を剥いていた。強い変性意識状態となり、ダイブ状態に入っている様子だった。
「木口ぃ!私達は今、木星に辿り着きました!明日には火星を通過して⋯⋯いよいよ、地球(テラ)です!」
間もなく浮島の計画が発動する。
デルタの救済計画も始動する。なんか、すでに⋯⋯タルパ界隈の関係各方面で、話がこんがらがり始めていた。
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その頃、浮島本人は東北新幹線で東京に向かっていた。
紅玉の霊的指南は凄まじかった⋯⋯精魂をすべて一度ぶっこ抜かれ、再びぶち込まれたような感じの儀式だった。
SAN値が激しく乱高下するもので、浴室内では激しい道路工事音が鳴り響き、アーク溶接のような火花が飛び散りまくった。
自分よりも二回り近く年上の女性との⋯⋯
浮島は完全に脱力状態と化し、呆然としていた。しかし、霊力は増強されたような気はする。それは確かなようだった。
「こんなこと、恥ずかしく誰にも言えない⋯⋯流石に親友である木口君にも内緒だ。恥ずかしく言えない⋯⋯」
浮島は頭を抱える。
だがしかし⋯⋯
浮島は木口の秘密を知っている。
「このままだと⋯⋯僕は卑怯者になる!うわあああああああああああああ!」
新幹線の車内に一人の青年の叫び声が鳴り響く。
「お客様、どうかされましたか?」
たまたま、通りかかった車掌に声をかけられ、浮島は赤面する。
「えっ?あ⋯⋯すみません。寝惚けてました」
周囲を見渡すと、他の乗客らも驚いた様子で浮島の方を見つめていた。
「すみません、すみません」
木口だけにはありのままを話そう⋯⋯浮島はそう決めた。
夕闇の車窓を見ると、すでに埼玉あたりだろうか⋯⋯東京っぽい感じの街並みへ徐々に変わりつつあった。間もなく終点だ。
その時である⋯⋯
自分の隣の席に許嫁が座っている様子がガラス窓に写し出されていることに気づいた。浮島は驚いて席の方を見ると誰も座っていなかった。
「彼女に知られたら⋯⋯僕は〇される」
浮島は再び頭を抱える。