タルパ戦争 File47 似非霊能者狩り
土偶は調子に乗ってある事ない事を伝えて来た。
細い目になる明美と零⋯⋯
明美はもうブチ切れる寸前である。
「なら、本物のダイブ界を見せてあげるわ!」
明美の形相が徐々に鬼のように変わって行く⋯⋯
話の内容から瞑想のようなポーズを取っている様子に伺えたが⋯⋯
変性意識状態にすらなってならず、ただ、兄になりすました明美とSkypeでおしゃべりをしているだけの感じだった。
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「うん、こんな感じでいいかな⋯⋯」
都内の一室で、パソコンに向かいながらそう呟く男がいた。
土偶である。
室内はカップ麺やコンビニ弁当の容器などのゴミで溢れかえり、甲斐性のない独身男性によくありがちな生活空間となっていた。
その直後である⋯⋯
土偶の身に大きな異変が現れる。
まるで離人症のような症状に襲われ、視野狭窄でも起こすかのように視界が徐々に薄れて行った。
「あれ?なんだ、これ?オレ⋯⋯いったい、どうしたんだ?」
意識が飛んで行きそうになり驚く⋯⋯
そうして、明美により強制的に本物のダイブ界へ引きずり込まれて行った。
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「やったわ!この土偶って男、私のダイブ界に落とし込んでやったわ!」
「えっ!まさか⋯⋯いつものように、動物霊狩りみたいな残酷なこと⋯しないよね?やめて!絶対にやめて!」
顔面蒼白状態となる零⋯⋯
しかし、明美自身も強いダイブ状態に入ったため、零の声はまったく聞こえない様子だった。
「血祭に上げてやる!」
「やめて!それだけはやめて!」
「戦車砲で木っ端みじんにしてやるわ!キャタピラーで潰すのもいいわね!」
零が明美の肩を掴み揺さぶるも、明美はこれにビクともしなかった。
明美はまるで独り言でしゃべっているかのように⋯⋯ダイブ界での状況を淡々を伝え続ける。
この後、土偶は夢の中で⋯⋯座敷わらし風の幼女が乗ったシャーマン戦車に追いかけ回される。
しかし⋯⋯
明美はタルパ界隈にナチスとドラゴンに魅了された霊能者、男がいたのを知る良しもなかった。その男の名は兜海老⋯⋯
金曜日に欧州戦線が再現されることになろうとは予想だにしなかった。