タルパ戦争 File44 ほら吹き
木口が頭を急に朦朧とさせた原因は⋯⋯
土偶のSNSアカウントのプロフィールにあった。
フランス外人部隊出身の格闘技のプロで、幾多の戦場で死線をくぐり抜け、強い霊能力に目覚めたとか何だかとか⋯⋯そして、チベットへ修行に行き、本物のタルパを作り上げたと書き綴られていた。
こんなもの誰も信じる訳ないだろう。
プロフィール画像は土偶の手だけが映し出されていたが、素人目からして特殊部隊で活躍していた軍人の手には見えなかった。
どこからどう見ても⋯⋯
ひきこもり系のオタクを思わせる手だった。
しかし、木口の妹、明美はこれに心を躍らせた。明美はちょっとした軍ヲタで⋯⋯こう言ったものにも目がなかった。
「金曜日前に完全に潰しちゃダメだからね」
零が明美にこう言うと⋯⋯
「そんなこと百も承知よ!お兄ちゃんから計画内容は聞いたわ!それに⋯⋯何回かに分けていたぶった方が楽しいわ!」
明美のその言葉に青ざめる零⋯⋯
とりあえず、土偶との約束の時間がやって来た。明美は咳払いをすると、兄の声真似を始める。
「どう?お兄ちゃんそっくりでしょう?」
これに驚く零⋯⋯
そして、Skypeで土偶とコンタクトを取る始めた。しかし、それは明美を少しがっかりさせるものだった。
「この土偶って男⋯⋯ぜんぜんダイブできない様子だわ!」
「えっ?じゃ⋯⋯」
「似非霊能者ね。なんとなく分かっていたけど」
明美は飽きれ顔になりつつも、土偶との回線が開くと、わざと苦しそうな声を出して迫真の演技を見せつけた⋯⋯
「もーし⋯⋯もし⋯⋯ど、土偶さんですか。木口で、ですぅ」
《ども!土偶です!こりゃ相当酷い様子ですね!早速、今からダイブしてみますね。暴走しているのは零っていうタルパですよね》
「そ、そ、そうです⋯⋯お、お願いします」
そんな明美と土偶のやり取りに苦笑いをする零
《うん、だんだん何かか見えて来ました⋯⋯これは⋯⋯おお!!》
この言葉を聞いて、細い目になる明美と零⋯⋯
「な、な、なんでしょうか?」
《零と言うタルパから強い怨念を感じます!!》
明美と零の二人は「うんな訳ねぇーだろ」と内心で土偶を訝った。