タルパ戦争 File43 読心術
ここは青森県恐山の麓近くにある滝壺⋯⋯
浮島は滝行を行っていた。白装束を着て手を合わせ、落水に打たれながら念仏のようなものを唱えていた。
それは目的地に到着するや否やであった。
紅玉なる女性は終始無言であった。父の紹介状に目を通すと、この場所に連れて来られ、とにかく、滝行を行うように命ぜられた。
しかし、意外であった。てっきり、父のような威厳ある人物に思っていたのだが⋯⋯紅玉なる女性は、30代くらいの容姿端麗な美女だったのだ。
だが、口数が本当に少なかった。
けれども、彼女から父に勝るとも劣らない強い霊力を感じることができた。
今は彼女を信じて滝行を行うことにした。
30分くらい経過しただろうか⋯⋯
普通の人なら限界時間をとうに超えている。紅玉が浮島の前に現れ、滝行をやめて庵に来るよう伝えて来た。
「ふ~う、流石の僕でも⋯⋯これはキツイな」
体を吹いて元の服へ着替えると、震える体を摩りながら庵へ向かった。
庵へ上がると精進料理が用意されており、紅玉にそこへ座るよう促された。どやら、二人での夕食らしい。
浮島は事情を説明しようとする。
「あの⋯⋯僕は⋯⋯」
紅玉はすました表情で味噌汁を静かに啜る。
そして、次の瞬間⋯⋯
「お主の友人は気の毒であったな。しかし、この度の企て⋯⋯半端な心構えで挑むと手酷い目に遭うぞ」
「えっ!?」
浮島は悟った⋯⋯
この紅玉と言う女性⋯⋯
父の知らない事、木口との共同作戦である点に言及して来た様子から、どうやら、読心術⋯⋯テレパシーのようなものが使えるようだ。
そして、さらに助言めいた話が続いた⋯⋯
「譲司と言ったな⋯⋯いい男だな。私もあと30歳くらい若ければ、今、この場でお前に⋯⋯いや、なんでもない」
「え???」
「そうか⋯⋯説明がまだであったな。私はこう見えても50歳だ」
えらい美魔女であることが判明した。
「話を元に戻そう⋯⋯結論からしてやめた方がいいだろう。しかし、やる以上は徹底的にやらねばならない」
「徹底的に?」
「そうだ、中途半端ではダメだ。強敵が約一名現れる」
紅玉の言葉に息を呑む浮島⋯⋯