タルパ戦争 File43 読心術

投稿日 2024.06.30 更新日 2024.06.30

 ここは青森県恐山の麓近くにある滝壺⋯⋯

 浮島は滝行を行っていた。白装束を着て手を合わせ、落水に打たれながら念仏のようなものを唱えていた。

 それは目的地に到着するや否やであった。

 紅玉なる女性は終始無言であった。父の紹介状に目を通すと、この場所に連れて来られ、とにかく、滝行を行うように命ぜられた。

 しかし、意外であった。てっきり、父のような威厳ある人物に思っていたのだが⋯⋯紅玉なる女性は、30代くらいの容姿端麗な美女だったのだ。

 だが、口数が本当に少なかった。

 けれども、彼女から父に勝るとも劣らない強い霊力を感じることができた。

 今は彼女を信じて滝行を行うことにした。

 30分くらい経過しただろうか⋯⋯

 普通の人なら限界時間をとうに超えている。紅玉が浮島の前に現れ、滝行をやめて庵に来るよう伝えて来た。

「ふ~う、流石の僕でも⋯⋯これはキツイな」

 体を吹いて元の服へ着替えると、震える体を摩りながら庵へ向かった。

 庵へ上がると精進料理が用意されており、紅玉にそこへ座るよう促された。どやら、二人での夕食らしい。

 浮島は事情を説明しようとする。

「あの⋯⋯僕は⋯⋯」

 紅玉はすました表情で味噌汁を静かに啜る。

 そして、次の瞬間⋯⋯

「お主の友人は気の毒であったな。しかし、この度の友人との企て⋯⋯半端な心構えで挑むと手酷い目に遭うぞ」

「えっ!?」

 浮島は悟った⋯⋯

 この紅玉と言う女性⋯⋯

 父の知らない事、木口との共同作戦である点に言及して来た様子から、どうやら、読心術⋯⋯テレパシーのようなものが使えるようだ。

 そして、さらに助言めいた話が続いた⋯⋯

「譲司と言ったな⋯⋯いい男だな。私もあと30歳くらい若ければ、今、この場でお前に⋯⋯いや、なんでもない」

「え???」

「そうか⋯⋯説明がまだであったな。私はこう見えても50歳だ」

 えらい美魔女であることが判明した。

「話を元に戻そう⋯⋯結論からしてやめた方がいいだろう。しかし、やる以上は徹底的にやらねばならない」

「徹底的に?」

「そうだ、中途半端ではダメだ。強敵が約一名現れる」

 紅玉の言葉に息を呑む浮島⋯⋯