タルパ戦争 File27 師匠との対面
翌朝、浮島は迎えに来たレゴの心霊タクシーに乗り⋯⋯
実家へ向かう。
浮島はげっそりとやつれ果てていた。
「随分とまぁ⋯⋯ですね」
「レゴさん⋯⋯僕は大学を卒業したら、すぐにあの女(ひと)と結婚しなければならない決まりになっている⋯⋯毎晩こんなんじゃ、死んでしまう」
「ははははは」
「笑いごとじゃないですよ」
「いや、すまない。とりあえず、滋養を人一倍付ける必要があるね。いい精力剤を処方してくれる漢方薬局⋯⋯今度、紹介するよ。ただ、こっちではなくあっちの側の世界のね⋯⋯湯世林堂とか言ったかな?」
「たのむよ」
「おう、結界の隙間へドリフトするぜ」
30分くらいだろう⋯⋯
浮島の実家に到着した。
「レゴさん、さっきの話⋯⋯卒業前にお願いします」
「わかった。連絡待つよ。じゃ!」
許嫁の居宅の時と違い、レゴは車を静かに発進させる。そして、浮島は手を振り、レゴを見送った。
「譲司!譲司か?」
「と、父さん!ただいま!」
「どうしたんだ急に?今年は忙しいから帰省できないと言っていたのに⋯⋯びっくりしたわ」
どうやら⋯⋯
浮島の父は、丁度、境内入口付近の掃き掃除をしていたらしい。
「う、うん⋯⋯ちょっと、父さんに相談したいことがあって。夕方にも東京へ戻るよ」
「なんじゃ、やっぱり、忙しなそうだな。まぁ、いい。早く母さんのところに行きなさい。あとで道場で話を聞こう」
「うん、そうするよ」
浮島は自宅を兼ねた社務所へ向かう。
浮島の母も突然の息子の帰省に驚く⋯⋯
少し早めの昼食を軽く済ませると、父の待つ道場へ向かう。
浮島の父は合気道の有段者だった。宮司を務める傍ら、合気道の教室も主催しており、弟子は1000人近くもいた。
道場の中央で⋯⋯
正座をして静かに浮島が自分の元にやって来るのを待っていた。
「父さん⋯⋯」
「うむ、何やら⋯⋯ただならぬ状況に直面しておるようじゃな」
「はい、僕の友人が自殺しました」
浮島の父は目を瞑り、深いため息をつく⋯⋯
すでにすべてを見通し、何かを達観していたようだ。浮島の父は日本屈指の陰陽師、霊能者でもあるのだ。