タルパ戦争 File07 鎮魂
凸都大学オカルト研究会で起きた悲劇は⋯⋯
表向き、一人の学生の個人的な悩みを原因とした、精神的な病によるものと断定された。
それは今から一週間前の出来事だった。
タルパを作ったメンバーに異変が現れ始め、数日もしないうちに奇行を顕にするようになったのだ。
凄腕の霊能者、陰陽師である浮島の力をもってしても改善が叶わず、後は現代の医療に望みを託す以外術のない状態に陥ったのだ。
最終的に、凸都大学医学部付属病院の専門病棟へ隔離されたのだが、多忙な医療スタッフらの目を盗み、病室から抜け出し、そのまま屋上へ⋯⋯
「まだ呼吸ある!誰か!早く!緊急外来の御前賀先生に連絡して!」
医療スタッフの悲鳴に近い声が鳴り響く⋯⋯
病棟のあちこちの窓から、下界の様子を見ようと、他の医療スタッフや入院患者らが覗くも、誰もがすぐに引っ込め、カーテンを閉じる⋯⋯
警察官の到着は早かった。
とりあえず、シートで覆われる。
そして、急いで用意された担架に乗せられ、そのまま緊急外来のある病棟へ運ばれた。
「自殺?え!!病院の敷地内で!?たくっ⋯⋯状況は!!」
そう、夕菜の父である。
洗浄台で急いで両手を洗うと、手術室へ向かった⋯⋯そして、その前の廊下のベンチで、項垂れるように座っていた男子学生がいた。
「違う!僕はこんなことのためにタルパの教えを広めた訳じゃない!」
そう、浮島である。
手術は夜遅くまでに及び、ICUへ隔離された。
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「浮島さん!!ほら!!オレ、美少女のタルパ作れましたよ!!」
「えっ⋯⋯」
自ら命を絶とうとした仲間が、タルパと称する美少女と花畑で一緒にはしゃぎながら戯れていた。
「浮島さん!!すばらしい技の伝授、ありがとうございます!!」
「ち、ちがう!!ちょっと待て!!待ってくれ!!」
大切な仲間が⋯⋯
タルパと手を繋ぎながら、三途の川らしき場所の方向へ歩き出す。
「戻れ!!こっちへ戻れ!!」
浮島は必死に叫ぶも、二人の姿は視界から消えた。
直後、寝落ちで姿勢を崩した浮島が驚き、目を覚ます⋯⋯全身、寝汗でぐっしょりな状態にもなっていた。
「夢か⋯⋯」