タルパ戦争 File02 ファッションタルパー
浮島の計画はこうだった⋯⋯
SNSを通じて、タルパ界隈に合同ダイブを呼びかけ、どれだけの者が本当にダイブすることができるのか確かめる試みだった。
浮島が本気を出せば、可能ではあったが⋯⋯
流石に、自身の霊能力で何かをやろうとしていた訳ではなかった。ちょっとした心理トリック、実験となる。
具体的には⋯⋯
合同ダイブによりイメージの共有ができるかどうかの実験であった。
それだけなら、ただの思念伝達、遠視の実験に留まる。人により共有できたりできない、ある程度のイメージ違いが発生しても、許容範囲となり、偽者と断定するには早計となる。
超能力界隈や霊能力系占い師の間では、その程度なら許されていた。
そこで⋯⋯
架空の幽体離脱系タルパーをでっち上げ、専用のSNSアカウントを開設。
しばらく、タルパ界隈で活動させた後⋯⋯ダイブ中、邂逅型タルパが暴走して、意識が半催眠状態のままに陥る事故を演出する。
そして、浮島が架空のタルパーを救出するため、ダイブで暴走したタルパを鎮圧をしよう⋯⋯そう、タルパ界隈に呼びかけるものとなる。
10人からはすぐに集まるだろう。
きっと、調子よく合わせた発言をして来るに違いない。
タルパ界隈で人気を博していた浮島が⋯⋯こうだと言えば、皆もこうだと言う風潮が漂い始めていたのだ。私も、僕も、俺も⋯⋯と言った感じにだ。浮島はそれに辟易としていたのだ。
恐らく、話を盛り、ホラを吹く者が続出するだろう。
しかし、木口はその計画に反対だった。
確かに⋯⋯
現状におけるタルパ界隈は、陸サーファーだらけの海岸だ。
しかし、本物もいるにはいる。見破られた場合のことを考えると、あまりにもリスクが大き過ぎる点に強い不安を覚えていた。
「もう少し⋯考えようよ。僕も浮島さんの気持ちは痛いほどわかる。他にやり方はないか⋯⋯僕も2~3日、じっくり考えたい」
「⋯⋯」
「浮島さん!絶対に一人で決断、行動しちゃダメだよ!」
「わ、わかった」
木口は浮島の両肩を掴み、軽く揺さぶる。
とりあえず⋯⋯
この後、二人で飲みに行こうと言う話になり、大学の裏路地にあった居酒屋へ向かうことにした。