タルパ戦争 File01 オカルト研究会
オカルト研究会⋯⋯
どこの大学にも、必ずあるであろう定番のサークルとなる。
しかし、凸都大学オカルト研究会は、他大学のものと性質が大きく異なり、西洋魔術からチベット密教の秘奥義として知られるタルパまで、実践をより重視した本格的な活動をしていた。
代表である文学部四年の浮島は⋯⋯
京都の名だたる大社の跡取り息子で、幼少の頃から陰陽師として英才教育を受けて来た人物であった。強い霊能力を持っており、すでに高校生の時から、父と共に除霊の仕事も請け負っていたのだ。
夕闇に包まれつつあった、大講堂前の正門広場のベンチで、二人の男子学生が談笑していた⋯⋯
「木口君と初めて出会ったのもこのベンチだったよね」
「あれは前期試験が終わった翌日⋯⋯浮島さんが、僕の背後からいきなり目隠しをして来て、あれは本当に驚いたよ」
「人並みならぬ強いオーラの出ていた君を放っておけなくてね」
そう、浮島と木口である。
浮島は苛まれていた。今日はそのことを告げるため⋯⋯
木口をこの意味のある場所へ呼び出した。ライト層が増えたタルパ界隈に一泡吹かせてやろうと、ある計画を打ち明けるためである。
「木口君⋯⋯僕はすべてを無に帰したい気持ちでいっぱいなんだ」
「タルパ界隈⋯⋯ですね」
「ファッションタルパーが増えた現状を⋯⋯もう、看過できない。僕は壊したい⋯⋯タルパ界隈を完膚なきまで破壊したいんだ」
「浮島さん⋯⋯霊能力を使って、何かやらないよね?」
「まさか、流石にそこまでやらないよ。ちょっとした実験を仕組むだけさ」
浮島、曰く⋯⋯
それを自分一人で行うので、木口にはそれを最後まで、見届けて欲しいとのことだった。
しかし、木口は浮島に再考を促す。
「浮島さんが何もそこまで思い詰める必要はないよ。もう、ネット上のタルパ界隈なんか放っておこうよ」
「⋯⋯」
「陸(おか)サーファーだらけのサーファー界隈みたいなもんだよ!タルパ界隈なんて!僕たちは僕たちの界隈を作ろう!」
「う、うん⋯ただ」
「タルパは自己責任⋯⋯浮島さんもそう言ってたじゃないですか!」
木口は説得を試み始める。
浮島の計画はあまりにもリスクが高過ぎたからだ。