タルパ戦争 File01 オカルト研究会

投稿日 2024.03.23 更新日 2024.03.25

 オカルト研究会⋯⋯

 どこの大学にも、必ずあるであろう定番のサークルとなる。

 しかし、凸都大学オカルト研究会は、他大学のものと性質が大きく異なり、西洋魔術からチベット密教の秘奥義として知られるタルパまで、実践をより重視した本格的な活動をしていた。

 代表である文学部四年の浮島は⋯⋯

 京都の名だたる大社の跡取り息子で、幼少の頃から陰陽師として英才教育を受けて来た人物であった。強い霊能力を持っており、すでに高校生の時から、父と共に除霊の仕事も請け負っていたのだ。

 夕闇に包まれつつあった、大講堂前の正門広場のベンチで、二人の男子学生が談笑していた⋯⋯

「木口君と初めて出会ったのもこのベンチだったよね」

「あれは前期試験が終わった翌日⋯⋯浮島さんが、僕の背後からいきなり目隠しをして来て、あれは本当に驚いたよ」

「人並みならぬ強いオーラの出ていた君を放っておけなくてね」

 そう、浮島と木口である。

 浮島は苛まれていた。今日はそのことを告げるため⋯⋯

 木口をこの意味のある場所へ呼び出した。ライト層が増えたタルパ界隈に一泡吹かせてやろうと、ある計画を打ち明けるためである。

「木口君⋯⋯僕はすべてを無に帰したい気持ちでいっぱいなんだ」

「タルパ界隈⋯⋯ですね」

「ファッションタルパーが増えた現状を⋯⋯もう、看過できない。僕は壊したい⋯⋯タルパ界隈を完膚なきまで破壊したいんだ」

「浮島さん⋯⋯霊能力を使って、何かやらないよね?」

「まさか、流石にそこまでやらないよ。ちょっとした実験を仕組むだけさ」

 浮島、曰く⋯⋯

 それを自分一人で行うので、木口にはそれを最後まで、見届けて欲しいとのことだった。

 しかし、木口は浮島に再考を促す。

「浮島さんが何もそこまで思い詰める必要はないよ。もう、ネット上のタルパ界隈なんか放っておこうよ」

「⋯⋯」

「陸(おか)サーファーだらけのサーファー界隈みたいなもんだよ!タルパ界隈なんて!僕たちは僕たちの界隈を作ろう!」

「う、うん⋯ただ」

「タルパは自己責任⋯⋯浮島さんもそう言ってたじゃないですか!」

 木口は説得を試み始める。

 浮島の計画はあまりにもリスクが高過ぎたからだ。