第99話 占領されたダイブ界
文子は明晰夢を得意とするタルパーであった。
そう言えば⋯⋯文子は自身のダイブ界へ久しく行っていなかった。今晩は明晰夢を見ることに決めた。
「今晩は明晰夢の世界へ行くわ⋯⋯」
「ボクもそろそろ寝るよ」
ゴンも文子と一緒に添い寝するため、布団の中へ潜り込むと、文子の横腹あたりで丸くなった。
文子はまぶたを閉じると、深い眠りに落ちて行った。
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その晩、文子は明晰夢の世界へダイブした。
仮に「国」と呼ぶ世界へ⋯
「あら、しばらく来ない間に、だいぶ発展している様子ね」
文子のダイブ界は⋯⋯
ニューカレドニアをモチーフにしたものだった。
文子は、この仮に「国」と呼ばれるダイブ界では、倉臼文磨と言う文豪として⋯⋯セカンドライフ的なもう一つの人生を謳歌していた。
そして、一緒に眠りについたゴンも、この仮に「国」と呼ばれるダイブ界で文子⋯⋯いや、文磨の相棒として行動する。
「文磨!久しぶりにやって来たね!」
「そうだな⋯⋯にしても、だいぶ発展したなぁ」
以前にはなかった⋯⋯
南国パラダイスの楽園には、少し不釣り合いな都会的な建物、ビルなどが増えていた。住人もどうやら増加している様子だ。
とりあえず、文磨とゴンの二人は、自分たちのダイブ界での家へ向かう。そこは二人が初めて出会った場所でもある。
ゴンは肩車してもらう感じに⋯⋯文磨の頭の上に乗る。
「いや、それにしても⋯⋯なんか、変わり過ぎじゃね?」
「なんか、ボクもそう思う」
ようやく、ダイブ界の家が見えて来た。こちらは特段変わった様子がない。中へ入ると、文磨はテレビを付けた。
《おはようございます!朝のガトーTVニュースです!》
文磨とゴンは互いに顔を見合わせる⋯⋯
「ガトーTVなんてテレビ局⋯⋯ボクたちのダイブ界にあったけ?」
ゴンが困惑した表情になる。
そう言えば、道すがら、見覚えない国旗のようなものが、ところどころ立てられていたような⋯⋯
文磨は家を飛び出すと、通りかかった通行人に尋ねてみた。
すると⋯⋯
「ああ、先月、この島はガトー公国の信託統治領になったんだよ」
愕然とする文磨⋯⋯