第96話 ヲチスレ
夜もだいぶ更けて来た⋯⋯
時刻は深夜11時に差しかかろうとしていた。
夕菜は机の上で大きなあくびをする。
「ふ~う、今日は本当に猛勉強したな」
「お疲れ!夕菜ちゃん!」
「ごめんね、あまり構ってあげられなくて」
「僕のことは気にせず、勉強がんばって!夕菜ちゃんの夢は僕の夢だから!」
「ありがとう!ポンスケ!」
夕菜はポンスケを抱きしめ、頬ずりをする⋯⋯
今度、穂都と一緒に、どこかへ遊びに連れて行こうと考えた。
ポンスケは元気で明るい性格をした⋯⋯まるで、人間の男の子のようなタルパとして固まって行った。
夕菜は寝る前に、Xと関連するサイトのチェックを始めた。ゴンと穂都のポストがいつもより少な目だった。
「二人とも⋯⋯やっぱり、今日は忙しかったんだな。私も頑張らなくちゃ!」
次に⋯⋯
ゴンや穂都から見ない方がいいと言われていた掲示板もチェックする。
やはり、何かどうしても気になるのだ⋯⋯
「相変わらず酷いわ」
タルパ界隈危険度リスト⋯⋯
これを貼り付けて中傷している者は、相手を貶めているつもりだろうが⋯⋯夕菜の目線からは、ただの人気ランキングにしか見えなかった。
ただ、一人の例外を除いて⋯⋯
「森蘭丸ってタルパの文体や語彙に似ているのよね」
リストには森蘭丸の名も連ねていたが⋯⋯
ただ、あまり深く考えるのはやめにした。もう眠い⋯⋯夕菜はそのままベットに潜り込むと、すぐに深い眠りについた。
「明日も勉強がんばるぞ⋯⋯ムニャムニャ」
:
その晩、夕菜はこんな夢を見た。明晰夢ではない⋯⋯
広大な砂漠の中にあるオアシス都市にいる夢だ。ポンスケを抱きかかえながら、大きなモスクのような建物の中へ入る。
ドームの中で一人のエルフの美少女が祈りを捧げていた⋯⋯
夕菜はその様子をただ見ていた⋯⋯すると、エルフの少女が、夕菜とポンスケの存在に気づき、不可解な言葉を投げかけて来た。
「ヲティスタンへようこそ」
笑みを浮かべるエルフの美少女⋯⋯
そこから夢の記憶は途切れ、以降、どんな内容が展開されたのか⋯⋯翌朝、目が覚めた時には忘れてしまっていた。