第95話 タルパ消失

投稿日 2024.03.09 更新日 2024.03.09

 父の予約したレストランで、新しい母、玉と対面する穂都⋯⋯

「はじめまして、穂都ちゃん」

「は、はじめまして⋯⋯」

「お洋服、気に入ってくれたかしら」

「は、はい。ありがとうございます」

「そんなに畏まらなくてもいいのよ。ありがとうでいいのよ。私はあなたのお母さんになる人なんだから」

 気がつくと、両肩に力の入っていた穂都⋯⋯

 二人の会話にやきもきする父。

 場の空気を盛り上げようと、いろいろと話題を切り出す。そして、最後にとっておきの話を明かして来た。

「穂都、父さんの今の仕事なんだが⋯⋯やめるよ」

「!!」

「実は⋯⋯自動車の中古車販売会社の役員に抜擢されたんだ。玉さんとの結婚を機に心を入れ替えるよ。金貸しはやめだ。今まで穂都に嫌な思いや辛い思いをさせて本当にすまなかった」

「ほ、本当に?」

「ああ、これから多くの人を幸せにする仕事をするよ!これからは三人で頑張ろう!玉さんもよろしくな!」

 穂都は父の思わぬ話に大粒の涙をこぼし始めた。玉もそれを見て、目をハンカチで抑えずにはいられなかった。

 だがしかし⋯⋯

 わずか数年後、除草剤で有名になる会社になろうとは⋯⋯現時点で父、穂積ですら知る由もなかったのであった。まぁ、なんやかんや、そうしてディナータイムはあっと言う間に過ぎ去っていった。

 とりあえず、今日のところは、穂積と穂都は自宅へ⋯⋯玉はまだ仕事が残っているので、住み込み先の議員宅へ戻ることにした。

 別れ際、穂都は玉から強く抱きしめられる。

「エシャロットのお陰だわ⋯⋯」

 穂都は帰路の車中、そう呟いた。

 自宅へ着いたら、エシャロットにすぐに報告してお礼を伝えよう⋯⋯穂都はそう決めていた。

 しかし⋯⋯

 自宅に到着すると、エシャロットの姿はどこに見当たらなかった。

「エシャロット!どこ?」

 穂都は自宅中を探し回る。

 その様子を見た父がどうしたのかと尋ねる。

 穂都は咄嗟に⋯⋯鞄に付けてあったキーホルダーを失くし、探していたと誤魔化した。

 エシャロットが夜外出することは、以前、何回かあった⋯⋯

「朝に帰って来るのかな⋯⋯」

 妙な胸騒ぎを覚える穂都であった。