第94話 神様タルパー
浮島の説明が一通り終わる⋯⋯
室内は神妙な空気に包まれ、しばし、沈黙の時が続く。
コーヒーを飲む浮島⋯⋯
「最後に、本日この付近で起きた出来事についてだが⋯⋯」
そう、夕菜の自宅で発生したと思われる件について言及し始めた。浮島自身のこれまでの経験から⋯⋯どうやら、ロシアのスペツナズ超能力部隊が関与している可能性が高いと判断していた。
しかし⋯⋯
なぜ、一介の女子高生のところに現れ、すぐに消えたのか?
「ねぇ、やっぱり、例の⋯⋯クリスマス直後から急激に増え出す件と関係があるんじゃない?私のスクライングでも⋯⋯どうも、クリスマスのビジョンも感じるのよね⋯⋯まだ、確信をもっていえる段階じゃないけど」
「うん⋯⋯それなんだ。スペツナズとクリスマス⋯⋯いったい、どんな関係があるんだろうか?他に何か気になる点はないかい?」
「その直後なんだけど⋯⋯」
「直後?」
「あの子の元に⋯⋯どうもタルパらしき存在が出現したの」
「どんな感じ?」
「小さな白いウサギのようね。以前、邂逅型のタルパが欲しいって⋯⋯私のところに相談しに来ていたのよね。おそらく、それかと」
「邂逅型タルパ⋯⋯まさか⋯⋯因果なものだな」
浮島は視線をコーヒーカップの中に落としながら、何か物思いに耽るよう考え事をはじめる。
まさか⋯⋯
スペツナズが夕菜と言う女子高生のところに、タルパを届けに来た訳でもあるまい⋯⋯そう考え込んでいた。
「シシル、すまないが⋯機会があればでいいんで、今度、彼女と会った時にそれとなく聞いておいてくれないか」
「あの子は素直そうだから⋯⋯ありのまま話してくれるかも」
「うむ、貴重な証言内容になるだろうな。一体、どんなヤツらが⋯⋯この日本で行動しているのか気になる」
「あと、タルパ界隈はどうする?」
「そうだな⋯⋯中露に上手い具合に利用されている節もある。下手をするとトロイの木馬的なものが⋯⋯あの界隈に仕込まれている可能性がある」
「神様タルパーよね?」
シシルのこの発言に、木口と林は息を呑んだ。
神様タルパーとは⋯⋯
タルパ界隈で定期的に現れる著名なメンヘラ女性だ。しかし、それは表面的な問題に過ぎなかった。