第85話 突然の迎え

投稿日 2024.03.03 更新日 2024.03.03

 夕方になると、父が帰って来た⋯⋯

 しかし、穂都は完全にむくれて、部屋に閉じ籠ってしまった。穂都の部屋のドアの前で必死に懇願する父、穂積。

「昼間は悪かったよぉ~。だから、機嫌を直してくれよぉ~」

 レストランの予約時間も迫っている。

「私は嫌よ!」

「穂都にどうしても合わせたい人いるんだよぉ」

「⋯⋯」

「お前の新しい母さんになる人だよぉ」

 すると、穂都の部屋のドアが少しだけ開かれた。空いたドアの隙間から父を睨む穂都⋯⋯

「新しい⋯⋯お母さん?」

「そう言えば、お前。何か荷物届かなかった?」

「昼間、宅急便で来たけど」

「それを着て今すぐ行こうよぉ」

「わかった。ちょっと待って」

 いったんドアが閉じられる。

 穂都は昼間に届いた服に着替えようとするが⋯服に触れようとした瞬間、躊躇うように手を引いた。

 悩む穂都にエシャロットは背中からこう言った。

「穂都!ダメだよ!ここは素直になりな!」

「う、うん、そうする」

「私は留守番をしているから、ゆっくり話をしてきな!」

 穂都は頷くと、玉から贈られた服に着替え、部屋の外へ出た。父、穂積が感極まり子供のようにはしゃぐ。

 穂都は父が運転する車に乗ると、予約先のレストランへ出発した。

         :

 一人残されたエシャロットは、屋根の上に登り、夕陽の染まる池袋の街並みを見つめていた。

「あたいの役目も⋯⋯もう、すぐ終わりそうだね」

 その時である⋯⋯

「お勤めご苦労様でした」

 エシャロットの背後から中年男性と思しき声がして来た。

「誰だい!」

 エシャロットが後ろを振り向くと、死神の頭領、ジェーン・パックマンが立っていた。

「あんたは⋯⋯」

「お迎えに上がりました。さぁ、約束通り、天国へ案内しますよ」

「⋯⋯」

「どうしました?」

「まだ、別れの挨拶が済んでいない⋯⋯」

「わかりました。なら、今晩の午前零時にまた迎えにきます。それまでに別れの挨拶を済ませておいてください」

 パックマンはそう言うと一瞬で姿を消した。

「おいおい、いきなりかよ⋯⋯」

 エシャロットは空を仰いだ。