第65話 追跡者たち
池袋駅西口に立つ浮島⋯⋯
意識を集中させ、気になる方角を探る。
「どうやら⋯⋯立教大学の近く⋯⋯らしいな」
まずは、立教大学の正門へ向かうことにする。
その一方で、市ヶ谷の防衛省を発ってから、ずっと、自分の後を付けて来る者の気配も感じていた。
さらに⋯⋯
自分を尾行する者を尾行する者の気配も微かに感じていた。
「俺はいったい⋯⋯何人、引き連れて歩いているんだろうな」
浮島はそう呟いた。
直接、本人を意識して尾行すると、霊的に察知されやすくなるため、日頃から自分を監視している公安を尾行することで、間接的に自分の身辺調査、情報収集しようと企んでのことだろう。
恐らく⋯⋯
自分を尾行する者を尾行する者の正体は、人民解放軍心霊気功部隊か⋯⋯ロシア連邦保安庁超常現象調査班(ロシア版Xファイル)、あるいは、スペツナズ超能力部隊だろう。
「日本の公安も⋯⋯もう少し、こっち方面にも力を入れて欲しいものだな」
浮島は深いため息をつく。
そうこうしているうちに、立教大学の正門前に辿り着いた。
「この大学内からではなく⋯⋯近隣の区画らしいな」
浮島は立教大学の敷地境界を辿るよう、近隣住宅街の道へ入って行った。夕菜の自宅へ迫る。シシルの指輪と事前情報から⋯⋯やはり、夕菜と言う女子高生のいる場所と関係があることに確信を持った。
その時である⋯⋯
「ちょいと待ちな!」
突然、浮島に声をかけて来る者が現れた。
夕菜の自宅から発せられていた念と尾行者たちの念に注視するあまり、エシャロットの接近に気づくのが遅れた。
まぁ、相手は所詮、不成仏霊である⋯⋯
不意打ちを喰らっても、陰陽師である自分に敵う訳ない。浮島はこれまで数えきれない不成仏霊を浄化している。
「随分と時代錯誤な格好をしているねぇ」
鎖を振り回し続けながら、間合いを取るエシャロット⋯⋯
「俺の存在に感づいても、この近くの異変には気づいていない様子だね」
「陰陽師は先公みたいで嫌いだね」
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電柱の陰から浮島らの様子を見つめる男⋯⋯
「あの娘は⋯⋯」
どうやら、更梨にも弱いながらも霊感があったらしい。