第61話 タルパ出現
突然の出来事だった⋯⋯
まるで、ホテル・モスクワの構成員を思わせる、厳つい軍人たちが目の前の現れたかと思いきや⋯⋯ポンスケを置いて消えてしまった。
「えっ?これで引き渡し完了?邂逅って⋯⋯こういうもんなの?」
ポンスケを抱きかかえ、キョトンとする夕菜⋯⋯
直後、一階から母の声がする。
「あまり大きな声出すとご近所に迷惑よ」
はっとなり、我に返る夕菜⋯⋯
そして、もぞもぞと動き出すポンスケ。ポンスケは見上げるよう、つぶらな瞳で夕菜の顔を見つめていた。
「ゆ、ゆ、夕菜ちゃん」
「ぽ、ぽ、ポンスケ!」
やはり⋯⋯
ウィキサイト「タルパを全力で作ろうと思っているまとめ」で読んだ通り、邂逅型のタルパは自動化と視覚化が完了していた。
「これが浮き輪さんの言うタルパね」
嬉しさのあまり、夕菜はポンスケを頭上高く持ち上げ、頬ずりをする。
その日から、夕菜とタルパの共同生活が始まる。
早速、DMで穂都とゴンに報告をする。
しかし⋯⋯
その時に限って、二人からの返信はなかなか返って来なかった。
「今は二人とも忙しいのかな?」
まぁ、穂都とゴン⋯
厳密には文子の身に起きた状況を知る由もなかった夕菜は、ポンスケとの邂逅を心から喜んでいた。
引き続き、Xで邂逅完了の報告ポストもする。
すぐさま、いいねも多く付き始め、夕菜はこれまで感じたことのない至福の境地となった。
:
その時、夕菜の自宅へ、一人の男が向かっていた。
浮島である。
私服に着替え、普通のサラリーマンを装う⋯⋯そして、移動中は背後も常に注意しながらのものとなる。
昨今は日中間の領土問題を発端に、一般国民の知らないところで、霊能力戦も密かに行われ始めていた。すでに、人民解放軍心霊気功部隊との戦いが始まっていたのだ。
そして、国内のある組織からも⋯⋯
浮島たちの部隊は監視され続けていた。公安警察のマル自である。
実家が護国系神社で、陰陽師の家系という不可思議な点に、公安警察からも注視されているだ。
「早速、つけられているようだな⋯⋯」
浮島を遠くから睨み、その後を追う男がいた。