第48話 海の中での邂逅
時刻はまだ早朝五時であった⋯⋯
岩鉄は気絶するように寝込んでいた千夏の横っ腹に蹴りを入れ、無理矢理、叩き起こした。
「痛い!いきなり、何すんのよぉおおお!」
「おい、起きろ!」
千夏は寝惚け眼の状態で目覚まし時計を手に取る。
「まだ五時だよぉ」
「今日から毎朝、空手の稽古を付けてやる!お前の根性を叩き直す!」
千夏は夜寝る際、ツイン団子ヘアにしてから布団の中に入るのだが⋯⋯岩鉄が両手でそれを鷲掴みにして、千夏の首を強引に持ち上げる。
「いいからとっとと起きろ!このバカ娘!」
意味不明であったが拒むことはできない状況だった。
岩鉄は千夏を空手着に着替えさせ、庭の外へ連れ出すと⋯⋯まずは、手本と称して、気合の入った大きな雄叫び声を上げて、頭突きで瓦を割ったり、素手でコンクリートブロックを叩き割ってみせた。
そして、まったく同じことを千夏に強要したのだ。
「どや!お前もやってみろ!」
顔を引きつらせる千夏⋯⋯
その日を境に、豈井家から毎朝威勢のいい声が鳴り響き始めた。
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感動の対面を果たす夕菜⋯⋯
自分が作ろうとしていたタルパが、今、目の前にいる。
「あの⋯⋯この子、私が作った⋯⋯えっと、なんて説明したらいいかな」
浮き輪もこうして、タルパと邂逅したのだろうか⋯⋯しかし、まさか、潜水艦の中での邂逅になろうとは想像だにしていなかった。
C子とランカが顔を向け合う。
「お前、まさか⋯⋯そいつ、お前が作ったタルパなのか?」
「えっ!なんでタルパ知ってるんですか!?」
C子が深いため息をつくと、これまた思わぬ話を吐露した。
「実はなぁ⋯⋯うちもお前と同じ世界に住んどるもんに作られたタルパなんや」
「えっ!?」
謎の沈黙の時間が数秒間続いた後、夕菜は恐る恐る尋ねてみた。
「それは⋯⋯誰ですか?」
「ああ、ワタシノフスキーや!」
顔を引きつらせる夕菜⋯⋯
「ま、まさか⋯⋯あなたは、あ、あのC子さん?」
「あのってなんやあのって?うんこのことか?ああ、よく言われるわ」
「あ、いえ、ごめなさい!ただ、驚いて⋯⋯」
衝撃的な展開に驚く夕菜⋯⋯