第47話 生まれて初めての潜水艦
夕菜は膨れっ面になりながらC子に答える⋯⋯
「普通の高校生ですけど⋯⋯」
「普通の高校生が明晰夢でこんなところに来る訳ないやろ」
「あのぉ!こっちの世界とかあっちの世界って何ですか?」
「なんや、お前!そんなこと分からんで明晰夢やっとるんかいな!」
船外機の音がけたたましく鳴り響いていたため、二人は大声で会話をする。そうこうしているうちに、ゴムボートははまぐりに到着した。夕菜は再び先任伍長に担ぎ上げられると、今度は優しく甲板へ降ろされた。
随分と手荒な扱いを受けたが、夕菜は生まれて初めて⋯⋯ニュース映像でしか見たことのない潜水艦を間近にしたことに感激した。そして、ポンスケがこの中にいる⋯⋯鼓動が高鳴る。
夕菜はC子に案内されるよう、解放されたハッチの中を降りる。
「おい、足滑らせないように注意しろ!」
「ヨイショ⋯⋯ヨイショ⋯⋯」
はしごを降り切ると、そこはアクション映画やSFアニメに見るような光景が広がっていた。前後左右には様々な電子機器が並び、頭上には配管やバルブのようなものでいっぱいだった。
「おい!機械に触れるなよ!」
思わず、何かの機械を手で触れそうになったところ、C子から注意を受ける。
「今からポンスケに会いに行くか?付いて来い!」
それにしても⋯⋯
どこからどう見ても、この艦長と思しき女の子は⋯⋯小学校入学前の未就学児童にしか見えない。しかし、その背中からは、全乗組員の命を預かる艦長として責任感、使命感、オーラのようなものが強く放たれていた。
自分よりも半分程度の身長なのに、自分よりも大きく感じられた。
そして、狭い通路を歩かされると、食堂のような場所へ通された。C子に席に座るよう促される。
「航海長!おるか?上陸班全員の収容を確認したら潜航や!」
「了解!」
C子が夕菜に対面するよう席に着く。
「おい、そう言えば⋯⋯お前、名前は?」
「ゆ、夕菜です!」
直後、床が傾き始め驚く夕菜⋯⋯
C子は平然と座ったまま、真顔で夕菜の方を見続けていた。
「おい!ポンスケとかいうウサギ、はよ連れて来い!」
すると、自分と歳の近そうな女性がウサギを抱きかかえてやって来た。