第45話 浄化

投稿日 2024.01.29 更新日 2024.01.29

 C子らの当面の任務内容はこうだ⋯⋯

 現在、地獄が暫定統治している惚気島を舞台に、あっちの世界にいるメンヘラの夢と融合させるので、島内に出現したメンヘラを一人残らず「浄化」せよとのことだった。それを半年間、毎日、続けるのが条件となる。

 ジェーン・パックマンは食えない男であった⋯⋯

 半年間、メンヘラの浄化を続けてくれさえすれば、惚気島の領有権を、地獄からガトー公国へ移管するとの提案をして来たのだ。

 本当に寒い話であったが、提案された内容が魅力的であったため、迷わずそのまま承諾することにした。

 しかし⋯⋯

 承認欲求にまみれたメンヘラの夢は邪なものばかりだった。

 C子は丸腰の人間をいたぶるのは気が引けていたが⋯⋯先ほどのメンヘラのように、威勢の良い者ばかりで安堵していた。

「罪悪感が残らん楽な仕事や」

 丘の上で立ち上がるC子⋯⋯

 とりあえず、本日はこれまでとして、沖合の潜水艦に戻ることにする。

「さて、腹が減った。みんな、船に戻ろう!続きは明日や!」

「艦長!あそこを!」

 数百メートルくらい先だろうか⋯⋯先任伍長が草むらの中でうごめくものを指差した。よく見ると一人の若い女性がいた。

「なんや?ここは無人島やぞ。追加で出現したメンヘラか?」

「艦長⋯⋯あの女性、前に会った自称魔法使いですよ」

 先任伍長は狙撃銃のスコープで視認しながらC子にそう伝えた。その時、C子が手に持っていた無線にコール音が鳴る。

「C子や!どうした?」

《艦長⋯⋯ウサギ、艦内に連れ込みました?艦長室から出て来たんですけど》

「なんじゃそりゃ?うちは動物なんか連れこんどらんぞ!」

《いや、動物でなく⋯⋯どうも獣人の子らしいです。ポンスケと名乗っております。身に覚えありませんか?》

「知らんがな、てか、今から帰投する。詳しい話はそっちで聞くオーバー」

《了解!》

 どういう訳か、先任伍長が細い目でC子を見つめていた⋯⋯

「な、なんや!その目は?」

「以前、キツネ族の獣人を食べようとしましたよね?」

「いや、流石に獣人は食わんぞ!」

「それより、あの魔法使いどうします?」

 C子は撤収前に身柄確保を命じる。