第45話 浄化
C子らの当面の任務内容はこうだ⋯⋯
現在、地獄が暫定統治している惚気島を舞台に、あっちの世界にいるメンヘラの夢と融合させるので、島内に出現したメンヘラを一人残らず「浄化」せよとのことだった。それを半年間、毎日、続けるのが条件となる。
ジェーン・パックマンは食えない男であった⋯⋯
半年間、メンヘラの浄化を続けてくれさえすれば、惚気島の領有権を、地獄からガトー公国へ移管するとの提案をして来たのだ。
本当に寒い話であったが、提案された内容が魅力的であったため、迷わずそのまま承諾することにした。
しかし⋯⋯
承認欲求にまみれたメンヘラの夢は邪なものばかりだった。
C子は丸腰の人間をいたぶるのは気が引けていたが⋯⋯先ほどのメンヘラのように、威勢の良い者ばかりで安堵していた。
「罪悪感が残らん楽な仕事や」
丘の上で立ち上がるC子⋯⋯
とりあえず、本日はこれまでとして、沖合の潜水艦に戻ることにする。
「さて、腹が減った。みんな、船に戻ろう!続きは明日や!」
「艦長!あそこを!」
数百メートルくらい先だろうか⋯⋯先任伍長が草むらの中でうごめくものを指差した。よく見ると一人の若い女性がいた。
「なんや?ここは無人島やぞ。追加で出現したメンヘラか?」
「艦長⋯⋯あの女性、前に会った自称魔法使いですよ」
先任伍長は狙撃銃のスコープで視認しながらC子にそう伝えた。その時、C子が手に持っていた無線にコール音が鳴る。
「C子や!どうした?」
《艦長⋯⋯ウサギ、艦内に連れ込みました?艦長室から出て来たんですけど》
「なんじゃそりゃ?うちは動物なんか連れこんどらんぞ!」
《いや、動物でなく⋯⋯どうも獣人の子らしいです。ポンスケと名乗っております。身に覚えありませんか?》
「知らんがな、てか、今から帰投する。詳しい話はそっちで聞くオーバー」
《了解!》
どういう訳か、先任伍長が細い目でC子を見つめていた⋯⋯
「な、なんや!その目は?」
「以前、キツネ族の獣人を食べようとしましたよね?」
「いや、流石に獣人は食わんぞ!」
「それより、あの魔法使いどうします?」
C子は撤収前に身柄確保を命じる。