第31話 夢の中でメタい発言をする幼女
夕菜を細い目で見つめ続ける謎の幼女⋯⋯
最初は幼稚園のセーラー服かと思っていたが、着ているものは海軍の制服のようで、階級章のようなバッチも光輝いていた。
遠巻きでは可愛らしく見えたネコやウサギの水兵達も⋯
間近で見ると、夕菜の身長よりも大きく、全員、厳つい表情をしていた。ヘルメットに防弾チョッキを着用しており、両手には銃を持っていた。
夕菜は次第に恐怖を覚え始めた。
「この島は民間人立ち入り禁止やぞ?どこから上陸した?」
「えっと⋯⋯なんて、説明したらいいかな?」
「それとお前、魔法使いか?えらい高さから飛び降りて来たようやが?」
「困ったな」
勇気を振り絞り、魔法使いを演じてみることにした。実際、明晰夢の中にいるので、魔法使いのような真似事は可能である。
「そ、そ、そうよ!私は魔法使いよ!」
その直後、周りにいた水兵たちが、次々と持っていた銃の撃鉄を起こして、夕菜に向けて来た。
しかし、目の前にいる幼女が両手を広げ、静止させた。
「全員、やめろ!銃を下ろせ!」
幼女ではあるが⋯⋯
どうやら階級が高く、この中で一番偉い様子だった。
「こいつ、視点がまったく定まっておらん!素人や!戦い慣れしとらん!」
「は、ははは⋯」
助けられているのか、貶されているのか⋯⋯夕菜にはよく分からなかった。
明晰夢は本当にリアルである。
夢の中と言えども、銃で撃たれるなどショッキングな内容の場合、心臓麻痺を起こして死ぬ場合もある。実は不用意な行動もできないのだ。
「お前、ホンマどこから来た?こっちの世界のもんか?」
夕菜は驚いた。
今、士官らしき幼女は「こっちの世界」とメタいことを言った。夕菜を細い目で見続ける幼女⋯⋯
「あの、私⋯⋯そろそろ戻るね。いい?」
「なるほど、やっぱそうか」
「えっ?」
「まぁ、ええ。気にするな!あっちの世界で何しとるもんか知らんが達者でな」
夕菜はその直後に目覚めた⋯⋯
上半身を勢いよく起こし上げ、両手を見つめ、グーパーして現実世界へ戻って来たことを確認した。
時計を見ると、まだ、深夜の午前三時だった。
「夢の世界の住人が⋯⋯」