第30話 潜水艦の夢
その後、安堵の気持ちで眠りに就いた夕菜。
タルパを作る決意を固め、心強い友⋯⋯トットフォーもいる。迷いはもうない。ポンスケと邂逅すべく、今晩は明晰夢に挑戦することにした。
そして⋯⋯
夕菜は夢の中にいることに気づく⋯⋯
「また、この島⋯⋯惚気島か」
とりあえず、ポンスケがどこかに潜んでいるかもしれないと、辺りを探して見ることにした。
「ポンスケー!!」
草むらや岩陰などを見て回る。
今日は探すのをあきらめ、断崖の上に座ることにした。
よく晴れた美しい海だった⋯⋯
「なんなら夢の中で創造型のタルパを作ってもいいのかな?」
悩む夕菜⋯⋯
すると、視線の先にあった海面が突如隆起し始め、何かが海の中から浮かんで来る様子を目の当たりにした。
「まさか⋯⋯海の中からポンスケが?いや、デカすぐる!海坊主か?」
しかし、それは海坊主ではなかった。
海の中から現れたものは潜水艦であった。激しい水しぶきと轟音を上げながら、夕菜の目の前に突如浮上して来たのだ。
「なんで潜水艦が登場してくんの!?」
やがて、潜水艦の中から人らしきものが次々と出て来た。それを凝視する夕菜⋯⋯しかし、あることに気づいた。
「乗ってるのネコとかウサギの水兵さんじゃん!」
きっと、あの中にポンスケがいるに違いないと、両手をいっぱい振り上げ、歓喜の声を上げる夕菜。
「おーーーい!私はここだよぉおおお!」
すると、ゴムボートが降ろされ、何人かがそれに乗り込み、激しいエンジン音と共に夕菜の方に向かって来た。
夕菜は断崖から飛び降り、真下の砂浜へ降りた。夢の中だからできる技である。もちろん、現実でそんなことをやった〇ぬ。断崖の高さはゆうに30~40mくらいはあったからだ。
しかし、ゴムボートの先端には⋯⋯
5~6歳くらいの人間の女の子が腕を組み立つような姿勢で乗っていた。
「なんや?お前、どうしてこの島におる?」
「えっと⋯⋯私はポンスケに会うために⋯⋯」
「ポンスケ?お前の連れか?救助が必要なのか?来てやったぞ」
「別に助けを求めていた訳じゃなくて⋯⋯」
訝しげに細い目で夕菜を見つめる幼女⋯⋯