第26話 幼馴染の正体
あれから数日が経過⋯⋯
今日から、いよいよ、夏休みである。
終業式も無事終わり、最後に教室で、折原の説教を延々と聞かされる。
解放されたい気持ちを必死で堪える生徒たち⋯⋯折原の説教は、とにかく、長かった。仏面で折原の暑苦しい説教を聞く夕菜。ようやく、説教が終わり、解散となった時、なぜか夕菜だけ職員室に呼び出された。
「御前賀、お前⋯⋯志望校と志望動機なんだけどさぁ」
「はい、それが何か?」
「いやさ、この学校⋯⋯とりあえず、そこそこの進学校だし⋯⋯」
「はい?」
「もう少しだな⋯⋯なんか、こう⋯⋯ないのか?」
「書いてある通りです」
「ぜんぶ、自宅から歩いて20分以内じゃん!歩いて行けるからって何!?」
「電車とかバスに乗って大学行くの嫌です!」
「じゃあ、就職はどうすんだよ!?」
「私はこの身を⋯⋯この豊島区に捧げる決意があるんですぅ!」
「なんじゃそりゃ?」
「豊島区の職員になりたいんですぅ!駅前にある区役所!」
直後、折原が手に持っていた、現代文の教科書が、夕菜の頭上に振り下ろされた。結局、書き直しを命じられ、明日の昼まで持って来るよう怒られた。
「それこそ、自宅はすぐそこなんだから、できるよな?」
「わかりました⋯⋯」
ようやく解放され、校門を出る夕菜。
「たくっ、何よ!あの暴力教師」
「夕菜ちゃん!」
ふと、振り向くと、校門の横で穂都が立っていた。
どうやら、夕菜を待ち侘びていた様子だった。とりあえず、この後、二人で近くのファミレスへ行こうという話になった。
「随分、遅かったね」
「ごめんね、担任に呼び出されて」
夕菜の話に困ったような笑みを浮かべる穂都。
それよりも、穂都はあれからの夕菜を心配していた。その後について、話をすることにした。
「穂都ちゃん!私⋯⋯やっぱり、作りたい!」
「そう⋯⋯」
すると、穂都は夕菜にすら内緒にしていたXのアカウントを明かして来た。幼馴染の知られざる一面に触れ、驚愕する夕菜⋯⋯
「穂都ちゃんの正体は⋯⋯トットフォーだったんだ」
トットフォーはタルパ界隈では著名な人物で、すでに夕菜も知っていた。