第17話 占い館
時刻は九時半⋯⋯
自宅からゆっくり歩いても、例の占い館まで30分とかからない。
夕菜の自宅は池袋駅から歩いて十数分のところにあった。先日、父に買ってもらった新しい服を着て、シレっと玄関を出ようとする。
「お母さん!今日、穂都ちゃんと映画見に行って来るから!」
「えっ⋯⋯あ~気をつけていってらっしゃい!」
とりあえず、日頃から少し過保護気味な母から⋯⋯
脱出に成功する。
軽い足取りで成吉シシルなる女性占い師のところへ向かう。
途中、立教大学の正門前を通る⋯⋯
「私は絶対ここに合格するんだからね!」
ガッツポーズのような姿勢を取る。
その後、池袋駅の構内を通り抜けて東口へ出ると、程なくして占い館が入居しているだろう雑居ビルを見つけた。ただ、何か⋯⋯左右のビルが立派過ぎるのか、この雑居ビルの年季が入り過ぎているのか⋯⋯
そんな違和感を拭い切れなかった。
ただ、この場で迷っていても致し方ない。意を決してビルの中へ入る。占い館は地下一階にあるようだが⋯⋯しかし、ホールで少し迷う。守衛室にいたおじさんがキョドる夕菜を見兼ね⋯⋯
「占い館に行きたいの?なら、そこの階段下りてすぐ右!」
と声をかけて来た。
夕菜は守衛のおじさんにペコリと頭を下げると、急ぎ足で階段を下りた。それにしても⋯⋯ビル前の通りは日曜日ともあり、多くの人が通行していたのに、中は随分と閑散としていた。
そして、成吉シシルの占い館の前に辿り着いた。
どうやら⋯⋯本日は自分が一番乗りなのか⋯⋯自分以外に他の客は一人もいなさそうだった。暖簾をくぐると中は細長い部屋のような場所で、目の前にテーブルが一つ置かれているだけだった。
テーブルの上に置かれていた呼び鈴を鳴らすと、奥からロングヘアの20代後半と思しき女性が出て来た。
「あら、いらっしゃい!タロットと占星術、どちらが御所望?」
「えっ、あ⋯⋯あの~私はデスタウンのことについて⋯⋯」
すると、シシルは笑みを浮かべ、夕菜に席へ座るよう促して来た。
「西口商店街の雑貨屋のおやじから聞いたわよ」
「えっ!」
「もしかすると、私のところに来るかもってね⋯⋯」
夕菜は息を呑んだ。