第16話 女の子が繁華街へ出かける理由
枕元の目覚まし時計を見ると、時刻はまだ早朝の五時少し前だった⋯⋯
遂にポンスケ⋯⋯
いや、ポンスケらしきものが夢の中に現れ、半分嬉しいやら悔しいやらの心境となり興奮した。眠気は完全に吹き飛び、スマホを手にするとXへアクセスして、存在とのファースト・コンタクトの報告をポストした。
数分以内に、数多くのいいねボタンが付いた。
その中には倉持本人もおり、夕菜は多くの関係者から祝福されたかのような気持ちになった。
「後は再現性を高めて行くだけね」
ただ、気がかりな点があった。
夢の中での背景となる⋯場所である。夕菜はファイナル・ファンタジーの世界観を参考に設定、事前に考えていたのだが⋯⋯現実の地球とあまり大差ない光景であったことから、その点に関してだけは少しだけがっかりした。
「でも、ダイブ界の悩みはシシルさんに聞けばいいか⋯⋯」
そう、今日は駅向こうにある⋯
成吉シシルと言う女性占い師のところへ行くつもりだ。
ただ、開店時間は十時だ⋯⋯
まだ、時間があったことから、Xでいろいろな人(タルパー)と交流して見ることにした。実はまだゴンとくらいしか交流していなかった。
スマホを食い入るに見つめる夕菜。
次の瞬間、通知が入る⋯⋯誰かからフォローされたようだ。
「森蘭丸?」
どうやら、横浜市在住の女性タルパーのタルパアカウントらしい⋯⋯夕菜は疑うことなくフォロー返しをした。直後、森蘭丸から「拙者を信じてくれてありがとう」なる⋯⋯妙な違和感のするDMが送られて来た。
「うーん、これ⋯⋯なりきりとどう違うだろう⋯⋯」
困った笑顔になる夕菜。
とりあえず、リアクションでハートマークを付けるだけに留めた。
室内の壁には⋯⋯先日、父に買ってもらった余所行きのワンピースがかけられていた。夕菜は今日はそれを着て行くつもりだった。
「そうだ、出かける理由はなんにしよう⋯⋯」
流石に、母に⋯⋯
占い館に行って来ますなどとは言えない。
近所に住む幼馴染で、日頃から仲の良かった遠井穂都と、映画を見に行くことにしよう⋯⋯そう決めた。そのように伝えれば、そのくらいで心配もかけないし、文句も言われないだろうと思った。