第07話 ダイブ(白昼明晰夢)
夕菜は目下、ダイブ界作りに夢中となっていた⋯⋯
「やりたい事なら今あるわ!」
そう独り言をつぶやきながら、ベットの上で座禅を組み、今度は瞑想のような真似事をして⋯⋯空想に耽ってみることにした。
不思議の国のアリスに登場して来る、あのウサギのように⋯⋯
そのうち、ポンスケも現れて来るはず⋯⋯今はそう信じて、ダイブ界の風景をイメージして、その中にいる訓練を開始した。
「ポンスケ⋯⋯」
そもそも、夕菜は空想遊びも大好きで、時々、白昼夢を見ることもあった。これを機会に、通常の明晰夢のみならず、ダイブ(白昼明晰夢)の技も習得できればと⋯⋯前向きな気持ちにもなっていた。
とりあえず、今はダイブ界のイメージをしっかり固め、それを明晰夢の中で再現させるのが喫緊の課題となった。
夕菜はファイナルファンタジーの大ファンであったため、同ゲームの世界観を、そのままダイブ界の世界観として設定することに決めた。
先ほど、タルパを全力で作ろうと思っているまとめを見たところ⋯⋯
ダイブ界を持っているタルパーの多くは、自分が好きなアニメやゲームの世界観を、そのままダイブ界の世界観に利用しているケースが目立っていたので、夕菜も最終的にそうすることにした。
しかし、ある事も気なっていた。
「浮き輪さん⋯⋯どんな人だったんだろう?ゴンに聞いてみようかな⋯⋯」
スマホを手に取ると、思い切ってゴンにタルパ戦争の件でDMして見ることにした。
タルパ戦争⋯⋯
今から10年ほど前、タルパ界隈で起きた事件である。
タルパを全力で作ろうと思っているまとめでも、その発生時期の記録があるだけで、詳細な内容まで記載されていなかった。
今度は一時間くらい経過してからだろうか⋯⋯
ゴンからタルパ戦争の件について返信が送られて来た。
しかし、ゴンですらその詳細は知らない様子だった⋯⋯何でも、Skypeを利用する形で、遠隔地に離れた者同士で一つのダイブ界を意識共有する「共有ダイブ」と呼ばれるもので⋯⋯事件は起きたらしい。
「共有ダイブ⋯⋯そんなものまであるんだ⋯⋯すごい!」
ただ、共有ダイブに関して、タルパ界隈でも意見が割れており、多くが否定的な声で占められていた。