第21話 動揺

投稿日 2023.07.08 更新日 2023.07.08

今日はシャンプー市内のあちこちを歩き回ったためか
とにかく腹が減っていた
できるだけ多くの大使館を訪問するため昼食を省いてもいたのだ
がっつくように食べる岩凪⋯
「水、注ぐか?」
例の如く、A子がポットを手に持ち傍に寄る
岩凪はたった今口の中に入れたものを飲み込むように食べると
ユセリアのことについて尋ねてみることにした
「なんや、そんなに慌てて」
「すみません、ちょっと尋ねたいことがあるんですけど⋯」
「自分はこのデスタウンに残ろうと思うんです」
「移民希望か?今、どうだろうなぁ~」
「ユ⋯」
岩凪がユセリアと口に仕掛けた途端
A子の顔色が突然変わった
「ユセリアだけはやめておけ!!絶対にアカン!!」
「どうして⋯何がダメなんですか???」
「あそこは笑うことが禁じられた国や!!笑ったら死刑になる」
死んでから数週間にわたり
このデスタウンを旅して来た岩凪であったが
たしかに⋯
ユセリアのことをよく思う人は皆無であったような気がする
詳しい話をA子から延々と聞かされ動揺する岩凪
「でも、笑わなければ⋯」
カレーのお替りを所望して
結局、カレーを3杯も食べ尽くした
岩凪は細身の体格でとても大食漢には思えないが
とにかくよく食べた
そして、食堂を去る際、A子に釘を刺すように忠告された
「ええか、バカな考えは起こすなよ」