第13話 地獄からの使者
投稿日 2023.07.01 更新日 2023.07.15
翌朝、清々しい表情で食堂に現れた岩凪
そして、朝食の食パンを6枚⋯およそ一斤も平らげた
それに目を見張るA子
「泊り客はパン食い放題や。好きなだけ食え」
7枚目を口にした瞬間、岩凪は喉を詰まらせそうになり
牛乳でかきこむ
凸や荘の特製食パンは
独特の食感と風味から近所でも好評で
毎日100個は完売していた
「さてと⋯食堂とパンの販売はパートに任せるか」
トレイに一人分の朝食を取り分けると
それを持ち事務室へ引っ込んだ
事務室には酒酒がいた
不安そうな面持ちでいたが⋯朝食を見た途端、笑顔になる
「ほれ、朝食や。しっかり食っとけ」
「うっほほほーーーい!!」
「しっーーーー!!声デカイ!!今のお前は匿われているんや」
赤面した後、静かに朝食に食らいつく酒酒
「大王⋯迎えのもん、朝にも寄越すゆーとったが⋯」
しばらくすると
食堂を切り盛りしていたパート女性から
A子宛の来訪者の知らせを受ける
「来たか⋯」
ロビーへ出て見ると
高そうなスーツを来た青年の鬼が立っていた
「なんや⋯弁護士のセールスか」
三途の川、つまり、地獄の入口から一番近くにある凸や荘には
泊り客相手に弁護士がよく地獄から売り込みにやって来る
「A子さん、ちょっと営業していいですか」
青年の鬼は岩凪の方を指差す