第06話 呪泉郷
投稿日 2023.06.27 更新日 2023.06.27
それは凸や荘から歩いて20分ほどの場所にあった
岩凪は入水すれば若い娘に変身することができるとされる娘溺泉を探す
「たくさんあるな⋯どれだろう」
あの世へ行く前に
どうしても美少女の姿になってみたかった
薬学部へ進学した理由も
薬局を営む実家を継ぐことは二の次で
自らの欲求を満たすのが本当の目的だった
ドラックストアいわなぎは彼の祖父の代から続く店であったが
そんなものはどうでもよかった
:
ざっと見たところ
泉が大小100近くはあるように見えた
娘溺泉を探し続ける岩凪
しかし、なかなか見つからない
それぞれの泉には立て札のような案内板が設置されており
仔細に解説されていた
小一時間くらい歩き回っただろうか
ようやく、お目当ての泉を見つけたようだ
「美少女になれる泉はこれだろうか?」
念のため周囲を確認する
どうやらこの呪泉郷に今は自分以外誰もいないようだ
岩凪を服を脱ぎ生まれたままの姿になると
泉の中へ入った
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後片付けを終えたA子が休憩に入る
夕食準備前のこの時間が、ここでの生活で唯一くつろげる時間であった
窓辺でコーヒーを啜りながらつぶやいた⋯
「美少女になれる泉はないがそれっぽいのは一つあったな」
その視線は彼方に聳える運幸大連峰に向いていた