タルパ戦争 File52 スレ乱立
浮島の長い旅は終わった⋯⋯
父の助言に従い、青森県の恐山まで赴いたが、具体的にこれぞと言うか⋯⋯得られたものはなかった。
ただ、何となくではあるが、霊力は増しているような気はしていた。
そんな感じだ⋯⋯
「草臥れ儲けみたいな旅だった⋯⋯」
浮島は深いため息をついた。
そう言えば、紅玉との出会いから帰路まで⋯⋯ずっと悩み続け、タルパ界隈の様子をまったく確認していなかった。それに気づき、上野駅の新幹線ホーム上でスマホを取り出す。
「さてと、木口君の下準備も順調に進んでいるかな⋯⋯」
明日はいよいよ決行日となる金曜日だ。
まずは、巨大掲示板たらばがにオカルト板を確認する⋯⋯
「えっ?なんだ⋯⋯こ、この状況は!?」
先日まで見かけたことのないスレが数多く立てられていることに驚く。
宇宙神軍救済計画スレやきそば10杯目、11杯目、12杯目⋯⋯そして、18杯目、19杯目と続く。
デルタによる木口に対する愛の言葉らしき投稿が延々とされ続け、関連スレは間もなく20杯目に達する。
その間隙を縫うようにアゲサゲを繰り返す管理スレ⋯⋯
デルタに対する苦情が延々と書き綴られていた。一方、デルタ以外の者が立てたと思われる新規スレも多数乱立されていた。
いずれも木口に関する内容だった。
「なんなんだ⋯⋯この状況は⋯⋯木口君⋯⋯いったい何を派手にやらかした?」
強い胸騒ぎを覚えた浮島は木口に電話をする。
同じ頃、木口は自宅近くのコンビニへ向かっていた。しかし、スマホを自室に置いたまま出かけていた。
「出ないなぁ⋯⋯」
不安な気持ちで浮島は木口のSNSアカウントへDMを送る。
その時である⋯⋯
浮島のスマホに着信通知が入る。
「おっと、木口君か?」
しかし、相手はレゴだった。
「えっ、レゴさん⋯⋯なんでレゴさん?もしかして、漢方薬局の件かな?」
慌てて電話に出る浮島⋯⋯
「浮島です!レ、レゴさんですか?どうかしましたか!?」
《夜分すまない。浮島君⋯⋯先日、京都にやって来た理由は聞かなかったけど⋯⋯もしかして、今のタルパ界隈の騒ぎと何か関係ある?》
息を呑む浮島⋯⋯