タルパ戦争 File51 霊能者を自称した者の末路

投稿日 2024.07.22 更新日 2024.07.22

 凸都大学医学部付属病院⋯⋯

 24時間365日休むことのない戦う病院である。救急の受け入れ要請は断らないがモットーだ。

 救命救急の専門医として一人の医師が日々奮闘していた。

 いろいろある⋯⋯

 自殺を図ろうとした者に対する怒りは尋常でないが、それでも医師として全力を尽くす。

「御前賀先生!また救急受け入れ要請です!」

「状況は?」

「市販薬の過剰摂取による意識喪失です!」

 看護師が受話器を耳に当てながら叫ぶ⋯⋯

「またODか⋯⋯たくっ、絶対に生還させて説教してやる!バカ親に変わってこの俺が往復ピンタしてやる!」

 青年を載せた担架が処置室へ運び込まれる。そうして、御前賀医師は一人の青年の命を救った。

 意識を取り戻した青年に対して⋯⋯

「おいコラわれ!何さらしとんのじゃボケが!全快したらシバくから覚悟しておけコラ!」

 そう耳元でがなり脅迫した。

「御前賀先生!また救急受け入れ要請です!」

 看護師の叫び声が鳴り響く⋯⋯

「状況は?」

「自宅で発狂して暴れ回った挙句、意識を失ったそうです」

「また薬物がらみか??まぁいい!!受け入れだ!!生還させてぶん殴ってやる!!この凸都大学病院に搬送されたのが運の尽きだ!!」

 間もなく救急車が到着⋯⋯

 担架に載せられた一人の若者が運び込まれた。だが、若干、意識は取り戻している様子だった。

「おいコラわれ!!何さらした?薬か?ああ?全快したらシバくぞゴラ!!」

 これにドン引きする救急隊員たち⋯⋯

 青年は弱々しい声で御前賀医師に何かを伝えようとした。

「助けてぇ⋯⋯やって来る⋯⋯やって来る⋯⋯」

「何がやって来るんや!?」

「戦車が⋯⋯戦車が⋯⋯戦車に踏みつぶされる⋯⋯」

「センシャ?洗車のことか?今は車の心配なんかしなくてええわ」

「いえ、大砲とか機関銃の付いている乗り物です」

 次の瞬間、御前賀医師はこの若者の耳元でこうがなった。

「お前はバカかあああああ!どうせ薬だろ!全快させたらリハビリ棟で拷問してやる!覚悟してとけボケぇがあああ!」

 青ざめる救急隊員たち⋯⋯

 一方、看護士は平然とした顔で点滴の準備を始める。