タルパ戦争 File45 宿命のライバル
浮島はすべてを悟った⋯⋯
恐らく、その強敵は法政大の更梨になるだろう⋯⋯
そう確信した。
「僕は⋯⋯友の死を防ぐことができなかった⋯⋯中途半端な気持ちでやるつもりはありません。だから、東京からここまでやって来ました」
「そうか⋯⋯そうであったな。中途半端な気持ちであったなら、こんな山奥までやって来るものではないであろうな」
「ただ、滝行は正直きつかったですけど⋯⋯」
「それで身も十分に清められたであろう。今宵、お主の霊力を強化してしんぜよう。まずは、夕食を食べると良い」
「はい。頂きます!」
幼い頃から陰陽師としての教育を叩き込まれていただけあり、青森に到着してから今に至るまで⋯⋯浮島の礼儀作法は完璧だった。
精進料理を綺麗に平らげると感謝の祈りを捧げた。
これに関心する紅玉⋯⋯
「とりあえず、風呂に入られるが良い。浴室はそこの廊下の先、突き当りを右に行ったところだ」
「風呂⋯⋯ですか?それは指南の後でも⋯⋯」
「私のやり方は特別なものとなる。まずは湯で疲れを癒すが良い」
紅玉はすまし顔で食後の茶を啜る。
浮島は言われた通り、風呂場へ向かう⋯⋯
とりあえず、紅玉の言葉に甘えて、まずは疲れを湯で癒すことにした。
「流石は⋯⋯霊験あらたかな場所の湯だな。京都のあの人(=許嫁)の家ものとはまた違う感じだ。身体に染み渡る⋯⋯」
すると、浴室と脱衣所を隔てる曇りガラスの扉に、紅玉の姿が映し出されていることに気づいた。
「どうだ?いい湯加減か?」
「は、はい!身体に染み渡るような素晴らしい湯です!」
「それじゃ、入るぞ!」
「えっ!?」
浮島の顔が硬直する⋯⋯
生まれたままの姿の紅玉が何の躊躇いもなく入ってきた。
「えええ!!ちょ!!いきなり何ですか???」
「これから霊的指南を行う。遠慮するな」
「???」
この意味不明な状況にパニック状態となる浮島⋯⋯しかし、この後、成すがままの状態にさせられる。
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一方、その頃、京都の浮島の実家では、浮島の父が縁側で夜空の月を見上げながら冷酒を嗜んでいた。
「あいつ⋯⋯今頃、骨抜きにされてるだろうな」