タルパ戦争 File33 シナリオ

投稿日 2024.06.15 更新日 2024.06.15

 翌日の月曜日⋯⋯

 凸都大学の正門広場で、浮島と木口が落ち合う。

 木陰下のベンチで、浮島が京都までの車中で考えた、実験のシナリオを木口に提案して来た。これが後に言う「タルパ戦争」の元ネタとなる。

「どうだろう、木口君⋯⋯僕はこの作戦で行こうかと思う」

「僕もこの案に賛成です。これで行きましょう!」

 そして、決行の日時は⋯⋯

 7月30日、金曜日の夜九時からと決まった。

「その前に僕はちょっと青森県の恐山に行って来ようと思う」

「えっ、恐山に?」

「う、うん⋯父の助言で、恐山にいるある人物に会っておいた方が良いと言われたんだ。僕はそこで霊的指南を受けに行く」

「パワーアップできるといいですね」

「う、うん⋯ただ、木口君の⋯⋯例の一件はどうだい?その後、特に変化はないよね?」

 木口は一瞬、迷った⋯⋯

「特に変化はないかな。あはは」

「そっか」

 この時、浮島は木口のこの妙な態度から、若干の違和感は覚えたが⋯⋯今は親友の言葉を信じることにした。

 浮島自身の身にも大きな変化が訪れていた。そう、東京へ戻る帰りの車中での出来事だった。

    :

「僕の霊能力を日本のために使え⋯⋯すみません、いきなり、そんな事を言われても⋯⋯ちょっと、困ると言うか」

「そうだな。すまない。どうやら君は口が堅そうな人間だ。やはり、身分を明かそう。私は東部方面隊に所属する陸上自衛官だ。今、日本の周辺情勢は尖閣問題をはじめ非常に緊迫している。それはニュース等で知っているね?」

「はぁ⋯⋯それと霊能者に何の関係があるんですか?」

「もしも、この日本が⋯⋯サイバー攻撃のような大規模な霊障を引き起こされているとしたら⋯⋯どう思う?」

「!?」

「昨今、ひきこもりの青年が増加しているのは⋯⋯どうやら、某国の霊能者による仕業らしい。そいつらは霊能者であると同時に軍人だ」

「⋯⋯」

「だから、今の自衛隊にも君のような人材が必要なんだ」

「僕が自衛隊に?」

 こうして⋯⋯

 将来、浮島は自衛隊幹部としての道を歩み出すのであった。

    :

「浮島さん!どうしました?」

「ああ、すまない。少しぼんやりしてしまった」