タルパ戦争 File33 シナリオ
翌日の月曜日⋯⋯
凸都大学の正門広場で、浮島と木口が落ち合う。
木陰下のベンチで、浮島が京都までの車中で考えた、実験のシナリオを木口に提案して来た。これが後に言う「タルパ戦争」の元ネタとなる。
「どうだろう、木口君⋯⋯僕はこの作戦で行こうかと思う」
「僕もこの案に賛成です。これで行きましょう!」
そして、決行の日時は⋯⋯
7月30日、金曜日の夜九時からと決まった。
「その前に僕はちょっと青森県の恐山に行って来ようと思う」
「えっ、恐山に?」
「う、うん⋯父の助言で、恐山にいるある人物に会っておいた方が良いと言われたんだ。僕はそこで霊的指南を受けに行く」
「パワーアップできるといいですね」
「う、うん⋯ただ、木口君の⋯⋯例の一件はどうだい?その後、特に変化はないよね?」
木口は一瞬、迷った⋯⋯
「特に変化はないかな。あはは」
「そっか」
この時、浮島は木口のこの妙な態度から、若干の違和感は覚えたが⋯⋯今は親友の言葉を信じることにした。
浮島自身の身にも大きな変化が訪れていた。そう、東京へ戻る帰りの車中での出来事だった。
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「僕の霊能力を日本のために使え⋯⋯すみません、いきなり、そんな事を言われても⋯⋯ちょっと、困ると言うか」
「そうだな。すまない。どうやら君は口が堅そうな人間だ。やはり、身分を明かそう。私は東部方面隊に所属する陸上自衛官だ。今、日本の周辺情勢は尖閣問題をはじめ非常に緊迫している。それはニュース等で知っているね?」
「はぁ⋯⋯それと霊能者に何の関係があるんですか?」
「もしも、この日本が⋯⋯サイバー攻撃のような大規模な霊障を引き起こされているとしたら⋯⋯どう思う?」
「!?」
「昨今、ひきこもりの青年が増加しているのは⋯⋯どうやら、某国の霊能者による仕業らしい。そいつらは霊能者であると同時に軍人だ」
「⋯⋯」
「だから、今の自衛隊にも君のような人材が必要なんだ」
「僕が自衛隊に?」
こうして⋯⋯
将来、浮島は自衛隊幹部としての道を歩み出すのであった。
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「浮島さん!どうしました?」
「ああ、すまない。少しぼんやりしてしまった」